超教育協会

2019.10.23
U-22プログラミング・コンテスト最終審査会 各賞決定!

週末はU-22プログラミング・コンテスト最終審査会に審査員として参加しました。本コンテストは1980年に「全国高校生プログラミング・コンテスト」としてスタート。その後、名称や運営主体を変えながらも継続し、今年で40回目を迎えています。

 最優秀賞である経済産業大臣賞(総合)を獲得したのは上原さん(中学3年)。完成度、技術力、アイデア、すべての評価項目で圧倒的点数を叩きだしました。ニコニコ生放送視聴者によるbest viewers賞でも圧勝。しかしながら、そんな点数などどうでもいい次元に彼は立っていた!驚くべき才能の出現に会場が沸きました。
 彼が開発したのは、人間にとって扱いやすいプログラム言語「Blawn」。TED風プレゼンが低年齢層まで広がる中で、上原さんは淡々とオリジナルプログラミング言語について解説します。審査員一同が最も衝撃を受けたのは、彼の学習スピード。上原さんは中学に入ってからPythonは使っていたものの、今年の7月に初めてC++を使い始め、その扱いにくさから、可読性が高い構文と、メモリの安全性や速度を高めた言語を開発したいと思うに至り、8月から開発に取り掛かったと言います。なお、本コンテストの応募締め切りは9月2日でした。
 質疑応答では、敏腕エンジニア・経営者たちがガチで質問するも、顔色一つ変えず、理路整然と論破していく。「恐れ入りました」と次々に引き下がる審査員たち。
 上原さんは、スポンサー賞も含めて4冠に輝きました。一人に賞が集中しすぎではないか?という声もありましたが、他の受賞者含め会場にいた誰もが納得の4冠だったと思います。同世代の圧倒的プレゼンは他の応募者にとっても大きな刺激になったのではないでしょうか。少なくとも私は興奮冷めやまず、審査会終了後すぐに駆け寄って、一緒に写真を撮ってもらいました。ミーハーですみません。
 「Blawnという言語名は「Blue Lawn(青い芝)」からもじったもので、「隣の芝が青く見える」ということわざで「青い芝」は羨まれる対象であることから、既存の言語の不満を解消できるような良い言語を目指したい」という想いで命名したとのこと。あの会場では上原さんに羨望の眼差しが注がれていましたよ。
 彼のような人をどう発掘し、プロモートするかは超教育的にも大事な論点かと存じます。

 本コンテストは、「プロダクト」、「テクノロジー」、「アイデア」の3つの視点で評価しているため、経済産業大臣賞「総合」以外に各部門の賞も設けられています。「有用性」と「芸術性」で主に完成度の高さを評価する「プロダクト」、「機能性」と「アルゴリズム」で主に技術力を評価する「テクノロジー」、「独創性」と「将来性」で主に発想力などアイデアを評価する「アイデア」の3部門です。

 プロダクト部門に輝いたのは眞部さん(22歳)による「LOCUS」。「ゲームエンジニアではなくゲームクリエイターでありたいんです。」プレゼンからアツかった彼は、名前が読み上げられた瞬間にガッツポーズとともに涙を流しました。来年からプロのクリエイターとして業務につく前に、自分の力を試し、さらに成長したい。そんな想いから制作したのが本作品とのこと。完成度の高さを褒められる一方で「ゲームとしては盛り込みすぎている」という審査員からの指摘は、眞部さんのこの作品にかけた想いの裏返しのように感じました。
 レールの上を走りながら、敵をシューティングで撃退する。本作品はシューティングとレーシングという2つの異なったジャンルの要素を併せ持つ新感覚のゲームです。ポイントはゲームエンジンに頼らずフルスクラッチで実装したこと。細部まで丁寧に調整することで独特の世界観を表現することに成功しています。
 テクノロジー部門に輝いたのは大門さん(22歳)の開発した「ブラウザ上で動作するDNCL処理系『Tetra』」。本作品は、プログラミング教育の必修化の流れを受け、その学習をサポートするツールとして開発されました。ブラウザを使用できる端末であればどこからでも利用できます。プログラムの作成や実行・デバッグをサポートする機能があり、入力支援機能を活用し、ダイアログに必要事項を入力すると、プログラムの一部が自動生成されます。それによりタイピングが不慣れな生徒や若年層のプログラミング初学者に、プログラム作成のヒントを提供することができるようになっているのです。プログラムの実行箇所の追跡が可能であるステップ実行モードや、丁寧なエラーレポートをつくることで、学習者のプログラム構造の理解をサポートしてくれます。プログラミング教育を推進するみなさま、いかがでしょうか?

 アイデア部門で見事受賞したのは若干10歳の冨田さん。冨田さんがこよなく愛するのは科学や元素。元素といえば「スイヘイリーベ・・・・」を口ずさみながら覚えますよね。私もそれで覚えました。ところが、この歌では、日本語を知らない人、耳が不自由な人、目で見て覚えたい人にとっては効果を発揮しない。冨田さんは、そう考えたのです。インターナショナルスクールに通う彼らしい発想です。そこで制作したのが、元素記号を楽しく覚えられるゲーム「Capture the Elements」。端的にいうと元素の早押しゲームです。指定された元素と同じ元素を見つけてクリック。難易度も5段階設定してあり、元素愛好家の冨田さんですら最高難易度はクリアしたことがないそう。「元素記号を探して叩いていく感覚は病み付きになる」とゲームとしての完成度の高さが評価されました。
 ちなみに冨田さんの一番好きな元素は「水素」だとカミングアウト。それ以降、審査員たちは好きな元素記号を宣言してから質問するという流れができました。審査員を巻き込み場の空気をつくる力があるプレゼンテーションでした。
 今年の特徴は、経済産業大臣賞が4人とも個人応募であったことです。突き抜けた才能のパワーを実感しました。しかし、強い「個」がぶつかりあって化学反応を起こした「集団」はもっと強いはず。次回はそんなチームの出現を期待しています。
https://www.csaj.jp/NEWS/pr/191021_u22.html