CANVAS

2013.05.21
おとコトひろば

2005年5月5日から「おとコトひろば」という企画を行っています。
子どもたちが、ネット上で世代や地域を超え、協働で音楽を作る場を提供するプロジェクト。
それから8年が経ち、つい先日CANVASにメールが届きました。
「絵や音楽などに関するワークショップのお手伝いをしたいです。」
おとコトひろば初年度に開催したコンテストでグランプリを受賞したナナちゃん!
当時小学校6年生だったナナちゃんが、大学生になって帰ってきた!
細々とでも続けているといいことってあるもんです。

おとコトひろばは「OTOKOTO」と名称を変え、CANVAS主催で今も続けています。
2005年5月に書いたコラムを今いちど掲載しておきますね。

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2005年5月5日のこどもの日を皮切りに、「おとコトひろば」がネット上でスタートしました。
言葉とメロディーがネット上で出会い音楽を生み出す。音楽を軸に、地域、世代を超えたコミュニティをつくりたい、子どもたちに敷居が高いと思われがちな「音楽」により親しんでもらいたい、そのような想いから、社団法人音楽制作者連盟と特定非営利活動法人CANVASが共催で企画した今までにない取組です。

■おとコトひろばとは
「おとコトひろば」は、小中学生の作詞作曲コンテストです。
しかし、普通のコンテストとは少し違います。タイトルのとおり「おと」と「コトバ」が出会い、たくさんの楽曲が生まれるネット上の「ひろば」を作ることを目的とした企画です。
ですから、コンテストといいながらも、音楽の知識や技術を競うものではありません。歌詞やメロディーを友だちと一緒に作りだすプロセスを楽しむこと、生み出した作品を広く世の中に発信することを促そうというものなのです。
具体的には、まず、ウェブサイトを通じて、小中学生に向けて、日常感じていることを『詞』で表現してみることを呼びかけます。次に、集まった詞をウェブサイトに掲載し、曲をつけてくれる人を募集します。最後に、ライブハウスで作詞者と作曲者がはじめて顔を合わせ、共作の楽曲を演奏する場を設けます。
その際には、プロのミュージシャンと共同で作業することを考えています。コンテスト期間中にも、プロのミュージシャンによるワークショップを開き、さまざまな音楽体験を子どもたちに提供する計画です。

■特徴1「音楽に対する敷居を下げる」
「おとコトひろば」には3つの狙いがあります。
1つめは「音楽に対する敷居を下げる」ということです。
今まで限られた人の表現領域であった音楽の創作活動を、誰でもが参加できるものにしたいということです。クレヨンでお絵かきをする、粘土でオブジェをつくる。それらと比較して、音楽の敷居はとても高いのではないか、と思います。楽器を奏でるにはたくさんの練習が必要ですし、作曲はいつからか特殊な知識を持った専門家だけのものになってしまいました。それをみんなに取り戻す。
歌詞だけでも、曲だけでも応募はできます。歌詞は、好きな人のこと、今日読んだ本のこと、感動した映画のこと、どんなことでも構いません。曲も、けんばんハーモニカで作ってみました、ギターで弾き語ってみました、ピアノを弾いていたらこんな曲ができました、というものはもちろん、パッと思いついた鼻歌でもよいのです。メロディーを録音して送ってくれればそれで大丈夫。事務局に電話をして歌ってくれれば、こちらで録音だって行います。楽譜にしたものでも構いません。バンドを作って、オリジナル曲を演奏して、それを送ってくれてもいいです。
音楽なんて良く分からない!そんな子どもたちのためにもこの広場は存在するのです。学校からひとりで帰る時、友達とショッピングで盛り上がる時、自然ともれる何気ないメロディー、頭の中からわきでる言葉を募集しています。

■特徴2:「楽しむもの」から「創るもの」へ
2つ目の狙いは、音楽を、聴いて、演奏して楽しむだけではなく自ら創りだすものへと変えていきたいということにあります。
一人ひとりが情報を作って世界に発信し、交流し、共有する時代です。コンテンツは「楽しむもの」から「創るもの」へと変わっていきます。音楽を通じて、自分で創り出し、発信することを体感してもらいたい、そう思います。このコンテストが「演奏」ではなく詩や曲を「作る」ことに着目しているのはそのためです。
上記の通り、このコンテストでは、どんなものでも制限なく受け付けますが、1つだけ条件があります。パクリはダメということ。とにかく自分でつくってもらいたいのです。
コンテスト期間中には、ワークショップや、ライブを通じて、プロの方と一緒に活動する機会をできるだけ多く持ちたいと思っています。プロのミュージシャンからの刺激を受け、創ること、表現することの難しさと楽しさを体感してもらいたいと思います。

■特徴3:「場の提供」
一番の特徴は、誰でもが参加できるオープンなネット上の広場を作ることにあります。
「おとコトひろば」のウェブサイトは、応募作品はすべて公開するのですが、作品発表や告知板といった情報発信だけではなく、プロジェクト参加者のコミュニケーションが生まれる「場」として機能します。
北海道に住む小学校4年生男の子が詞を送ってくれました。「歯が抜けた歯が抜けた!」。それにピンと感じた東京在住の女の子がピアニカで曲をつけてくれました。この二人の楽曲を聴いた沖縄石垣島の中学生の男の子がパーカッションでリズムをつけて送ってくれました。そんな具合です。
インターネットを使えば、必ずしも一人で全部つくらなくてもよくなるのです。自分の詞に曲をつけてくれる人も、曲に詞をつけて、歌ってくれる人だって見つかるでしょう。インターネットを使うことで自分の詞が、曲が、いろんな形に変化していくかもしれません。
ネットの本質は、誰かが作ったコンテンツを送るための「道路」ではなく「広場」です。その広場を子どもの音楽世界で実現してみようということです。「おとコトひろば」は、リアルの世界ではめぐり合うことのなかった同じ関心を持つ人々が出会い、刺激を与え、協働する空間を提供します。そして、子どもたちは、情報を持ち寄って、交換し、共有して、そして新しいアイディア・価値を生み出していきます。

■オワリに
子どもたちに、日常感じていることを素直に表現して欲しいと思います。
湧き上がったイメージを素直にメロディーにしてもらえたらと思います。
誰でも気軽に自己表現できるこの場所から、今までにない新しい音楽表現が生まれることを願います。
全国各地のこどもたちと、世界中のこどもたちと、コラボレーションが生まれることを願います。
そして、音楽を軸に、地域、世代を超えたコミュニティができ、今後自律的に全国各地でこどもたちの音楽の創作活動が創発することを期待します。
デジタルの力を借りることで、これまでとは違った表現手法が開拓されていくかもしれません。音楽が生まれるまでのプロセスも変わっていくかもしれません。
CANVASは、子どもたちが創造し、表現し、そして、それを、ネットを使って共有する様々な活動を全国各地で、時に世界と連携しながら推進しています。
デジタルは表現手法としてはまだまだです。
でも、世界をつなぐ、という点においては、デジタルは非常に優れています。世界中のこどもたちがつながって、新しい表現やコミュニケーションを拓き、新しい社会を築いていって欲しい、そう思います。