超教育協会

2019.12.04
【レポート】シンポジウム「異業種参入相次ぐプログラミング教育市場」(前半)

一昨日、ソフトバンク、タミヤ、LINE、東急、サイバーエージェント、GMO、DeNA、mixiに登壇頂き、シンポ「異業種参入相次ぐプログラミング教育市場」を開催しました。朝から大雨が降り電車のダイヤも乱れていましたが立ち見がでる満員御礼のシンポとなりました。登壇&来場頂きましたみなさま、ありがとうございました。
まずは前半のプレゼン内容についてご報告。後半のディスカッションは後日またレポートします。私は司会&モデレーターをつとめましたが、登壇者人数が多く、みなさんにプレゼン&発言を急かしてしまい失礼しました!

PepperはScratchをベースとしたツールでプログラミングできるようになったのです。そんなPepperを活用したプログラミング教育についてソフトバンク門脇哲太郎さんよりお話。
ソフトバンクにとって次世代育成は最重要テーマ。社会貢献事業として「プログラミング教育支援」「ICTを活用した部活支援」を行っている。プログラミング教育事業に関してはPepperを活用して推進。全国850校で実践をしており、授業回数は3万回におよび世界最大級。登校時から放課後まで活用できるよう、英語での絵本読み聞かせ、4教科での反復学習、あいさつ運動、学校行事案内、ラジオ体操など複数の学校向けロボアプリを提供している。また先生方がPepperを補助教員として授業をつくることができるようスクールテンプレートも用意している。
Pepperプログラミング教育の特徴は「自ら課題を発見し、解決方法を考え、社会実装する」教材であること。自分の行動が社会に貢献していることを実体験してもらいたいと考えている。小学校での実践例では、図書室で貸し出される本の偏りをなくすための解決方法を考え実装。実際に多様な分類の本が読まれるようになったか効果を検証し結果をまとめるところまで行う。中学校での実践例では、外国人観光客増加の方法を検討し実証実験をすることで地域振興に役立てた。課題の設定、情報収集、整理・分析、結果のまとめまでを子どもたちが行う。
東京工業大学との共同研究でカリキュラムの効果測定をしたところ批判的思考態度が育まれたことがわかった。なお批判的思考態度は探究心、証拠の重視、授業の受け方、論理的思考の自覚、客観性、意見の聞き方、考えの深め方の7つの尺度で測定している。
今後も人型ロボットで最先端の学びを提供していきたい。

タミヤのプログラミング教育について語るのは石﨑隆行さん。
タミヤはプログラミング(STEM)教育を「モノ」と「コト」の観点から推進している。
タミヤがはじめてプログラミング教育に関する「モノ」を出したのは2017年8月。カムプログラムロボット工作セット。その後チェーンプログラムロボット工作セット、マイコンロボット工作セットも発売。
「モノ」を売るだけではなく、使う環境も整備したいという想いから、2018年4月よりタミヤロボットスクールをスタート。29都道府県で94教室をナチュラルスタイルと連携して運営している。ロボットプログラミングコースとメカニックコースを用意している。
タミヤのプログラミング教育参入のニュースはプログラミング教育関連のニュースの中で最もテンションが挙がりました(*^^*)

LINEの西尾勇気さん。
LINEのコーポレートミッションは、世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること。2011年に「LINEいじめ」という言葉が生まれて以降、ネットリテラシー啓発活動に力を注いでいる。その延長でプログラミング教育支援も開始。学校現場の声を踏まえ、先生方の不安を解消することを目的とし、無料のプログラミング学習プラットフォーム「LINE entry」を開発・展開。授業で活用できるよう学習指導要領に沿った教科・学年別の教材を無料で提供する他、小学校への出前授業も実施。また授業振興や進捗管理もできるクラスルーム機能もある。先生が扱いやすく準備時間が短くなる教材を目指している。10月末にリリースし6本の教材を公開している。
小学校1年生から使えるLINE entryの特徴は「みんなが楽しい」「無料」「先生向けコンテンツが充実」「クラスルーム機能」「オープンプラットフォーム」の5つ。
韓国では2019年から全小学校で「エントリー」によるプログラミング教育がスタートしているようで、そのインタビューは過去のこちらの記事をご参照ください。
http://csforall.jp/interview/3192/

東急株式会社「プログラミング教育に関する取り組み」についてお話をしてくれたのは石川あゆみさん。
サステナブルな「街」、「企業」、「人」をつくるという経営計画のもと、渋谷及び沿線の再開発を重点施策として掲げている。その中で、子育て世代に向けた良質な教育環境の整備は重要な論点。100年に1度の大規模再開発を迎える渋谷は世界のSHIBUYAを目指し、教育支援の取り組みをスタート。2019年6月に、渋谷区、サイバーエージェント、DeNA、GMO、mixi、東急がプログラミング事業に関する協定を締結し、「Kids Valley未来の学びプロジェクト」を立ち上げた。
渋谷だからこそ可能な官民連携による次世代教育モデルを実現し、世界で活躍する人材を育成するとともに日本のプログラミング教育を牽引することを目指している。取り組みを通じて育成したいのは「自らのアイデアを自由に表現する力としてプログラミングの技能を養い、発展的に社会に活用する意欲を持つ人材」としている。今後カリキュラムの開発、教員研修、授業支援、ワークショップイベント等を展開していく予定。また大学等学術機関との連携スキームを構築、他地域への展開も検討していく。

サイバーエージェントのプログラミング教育推進についてはサイバーエージェントエデュケーション事業部、(株)CA Tech Kids、(株)キュレオを率いる上野朝大さんよりプレゼン。
体験型イベントで「楽しい」という最初のキッカケを提供し、継続型スクールで「もっとやりたい」想いに応える継続的な学習の場を提供。そして「極めたい」子どもたちのために奨学金制度やコンテスト・検定を用意し「出る杭を伸ばす」流れをつくっている。
きっかけづくりとなる体験ワークショップ「Tech Kids CAMP」の参加者数は4年間で10倍伸び、今年は1600人の参加があった。もっとも力をいれているのが継続的な学習の場の提供としてのTech Kids School。こちらは生徒数が4年間で20倍に増え、現在1200名。「テクノロジーを武器として、自らのアイデアを実現し、社会に能動的に働きかける人」の育成を目指している。
Tech Kids Schoolではプログラミング的思考に留まらない有用な技術としてのプログラミングを教えることを目指し、1年目はScratchを学び、2年目以降はiPhoneアプリ開発コースもしくはUnityプログラミングコースに進むカリキュラムとなっている。すでに生徒たちから多数のアプリがリリースされている。しかしこのモデルを普及していくのは難しい。そこでビジュアルプログラミングを楽しく手軽にしっかり学べるプログラミング教室としてキュレオプログラミング教室をスタート。すでに1000教室を突破している。
その他、小学生のためのプログラミングコンテストやプログラミング検定を実施。
公教育向けプログラミング教育普及活動に関しては、全国の自治体、小学校で100回を超える出張授業を実施中。

GMOの取り組みは成瀬允宣さんよりプレゼン。
プログラミング教室ポータル「コエテコ」を運営してきた。Kids Valleyに参画することになり、プログラミングイベントも実施。テーマとして据えているのはプラグドとアンプラグドの両者の垣根をなくすこと。スイカ割りのプログラム化に挑戦してもらった。順次、条件分岐、くり返しの3つを90分で学ぶ。「90度回す→10歩動かす→ぼうをふりおろす」という動作で順次を学ぶ。スイカにふれたかどうかで成功か否かを表現することで条件分岐を学ぶ。スイカがたくさんあったら、コンピュータが得意とするくり返しが役に立つことを学ぶ。その上で星を描くプログラムをつくってみる。プラグドとアンプラグドを地続きにするカリキュラムを先生方にも伝えていきたいが課題は教える側の不足という認識。

DeNAのプログラミング教育の取り組み関して末廣章介さんより。
インターネット企業として強みと特徴を活かした社会貢献活動を実施。具体的にはプログラミング教育、企業訪問学習、ネットマナー教育の3つを通じて次世代IT育成支援を行っている。2014年からプログラミング教育をスタートし6000人以上に授業体験を提供。低年齢層に体験してもらえるようにプログラミングゼミというアプリを無料でリリース。誰でもどこでも気軽にプログラミング体験できる教材。プログラミングゼミの特徴は、
1. 自分で描いた絵が動きだす意欲を高めるインタフェース
 タブレットの一番良いところはカメラ機能があるところ。自分の絵が動くと子どもたちは感動する。描いた絵をそのまま使ってプログラミングをしている。子どもたちが使い慣れた画材を使用できるため、表現、イメージがしやすく、図工などの作品を活用できるというメリ
 ットも。
2. 低学年から使え、基礎から応用、創作まで楽しみながら学べる
 発達段階に配慮し、教員児童からのフィードバックを反映し、50音キーボード、ひらがな・カタカナ表記を取り入れている。また、プログラミングスキルやブロックの組み方を楽しみながら習得する「基礎」から、みんなの作品を参考にしながら発展した内容を理解する「応用」、自分が描いた絵を取り組みオリジナル作品をつくる「創作」まで、段階を追って学ぶことができるようになっている。
3. 公教育での導入実績
 すでに複数の小学校で導入されており、98%以上の児童が「楽しかった」「もっと授業を受けたい」と回答している。
4. マルチデバイス対応、オフライン使用可能

また、使用時間制限、作品の公開設定、スキルレベルの設定機能、カリキュラム案・入御事例の公開など保護者先生向けのサポート機能もついている。

mixiの取り組みに関しては田那辺輝さんより。
次世代育成の取り組みとして、企業訪問プログラムとプログラミング教育支援を行っている。企業訪問プログラムに関してはIT業界の仕事について、エンジニアの仕事やプログラミングについて、インターネットやスマートフォンの安全な使い方についてなどに取り組んでいる。
プログラミング教育支援としてはKids valleyに参画している他、中学校と連携し、プログラミング教育支援やプログラミング学習クラブ支援等を行っている。