CANVAS

2019.03.13
ワークショップコレクション、これまでとこれから

 今週末もワークショップコレクションinよしもとです。今後はもっと多くの地域に展開しそうな兆しがあります。というわけで、今後のワークショップコレクション展開に向けてこれまでの工夫の共有を。
 デジタル時代の新しい学びをファッションショーのようにポップに伝えたい!そのような想いからはじまったワークショップの博覧会「ワークショップコレクション」。 
 CANVAS設立当時に実施した国内外の実態調査で挙がった課題の1つが普及に当たっての情報の一元管理と発信の場の構築。ワークショップコレクション(WSC)はイベントではなくワークショップ(WS)普及の手段だったわけです。
 第1回は港区のレストランを借り、参加者500人という小さな規模での開催でした。それが毎年、大きく広がり、第9回となる2013年には来場者数は2日間で10万人に達しました。およそ200倍。世界最大の子ども創作イベントに成長しました。子どもの創造力や表現力を育みたいと考える保護者が増え、活動に対する需要が年々急激に高まっていることを実感してきました。協同で創造する学びの場としてのWSの広がりに多少なりとも寄与できたのではないかと自負しています。
 最近は様々な地域から問い合わせを頂くようになり、すでに福岡、静岡、仙台、京都などで展開されています。そして、来年度はさらに広がりそうな予感?!
 そこで、お金もないイベント素人が、試行錯誤を繰り返しながら、当初目的を失わないように留意しつつ、10万人イベントに育てた工夫の過程を共有します。おそらくWSC主催者にしか参考にならない情報です。しかし、来場者・出展者にアンケートを取り続けながら予算がないなりに少しずつ改善してきたポイントですので、今後展開する主催者の皆様のなんらか参考になると嬉しいです。出展者の皆様には、出展目的、満足度、WS参加者数、良かった点・改善点、反響、希望募集時期、出展料の妥当性、希望会場等を毎年確認し、皆さんの声を反映してきました。
*なお、WSCをはじめた頃は、「WSとはなんのお店ですか?」「創造力ということはアーティスト育成活動ですね?」などと言われ、メディアでは「ワークショップ」ではなく「勉強会」などと書かれていましたので、いまとは状況は違うと思います。

 まず、WSを広く多くの子どもたちに届けることを目的としたWSC推進においては、「多様化」、「高度化」、「普及」の3つの視点を意識してきました。
1.多様化
 WS数の増加のみならず、種類の多様化に繋がるよう配慮しました。WSは分野横断型の企画が多いため迷いつつも分野を明記しているのもこれが理由。また、行政、企業、アーティスト、研究者、学校、大学、ミュージアム、メディア等、多様なプレイヤーが参画し「みんなでつくる」場となるよう意識してきました。
 意識した視点:カリキュラムの多様化&プレイヤーの多様化
2.高度化
 数が増えるだけではなく、1つ1つのWSの質の向上にも寄与できる仕組みをつくるよう心がけました。内覧会の実施やアワードの導入もその一環。また、これから特に重要であると考えていた先端技術系WSが増えるような努力もしてきました。
 意識した視点:質の向上&新たな分野のWSの創出
3.普及
 最も重視したことがもちろんいかにWSを普及させるかという点です。当初より、子どもたちの創造の場、WS開発者が刺激し会う場、WS実施者と開催希望者の出会いの場という3つを目的として掲げていました。WSCを通じて、保護者・子どもたちへの認知拡大、実施者の増加、WSの他地域展開につながるよう意識してきました。キッズデイの導入もこの一環。
 意識した視点:WSの認知の向上&WSの増加と普及

 さて、上記3点を意識しながら各回で取り入れた工夫と変遷は下記の通りです。各改善ポイントの意図を書き始めるといくらでも書けてしまいそうなのでざっくりと。

【第1回:2004年1月。ザ・トウキョウレストラン】
■来場者500名。出展数13。
■初回は半日開催。想定を超える集客があったこと、WS実施のルールが明確でなく1WSあたりの体験時間が長かったため大混雑。

【第2回:2005年1月。日本科学未来館】
■来場者1400名。出展数15。
■改善ポイント
・参加者のWS体験数を増やせるようWSCにおけるWSのルールの明確化
・他地域での展開を促すためにWS実施者・来場者の懇談の場の設置
・WSという言葉の認知の低さから副題を追記「こどものための最新ワークショップの博覧会」
・子どもたちの認知を高めるため、教育委員会の協力を得て学校を通じたパンフレット配布開始。

【第3回:2006年3月。秋葉原ダイビル】
■来場者2500名。出展数20。
■改善ポイント
・WS実施のガイドラインの設定
・多様なWSを求めてWSの公募開始
・WSへ関心が高かった未就学児へのアプローチ開始
・企業のWSへ関心が高いことから企業への周知活動開始
・WS質向上のため、懇談会にプラスして出展者同士の内覧会を開催

【第4回:2007年6月。慶應義塾大学三田キャンパス】
■来場者6500名。出展数34。
■改善ポイント
・会場希望アンケートを踏まえ、場を大学にすべく交渉開始
・WS研究者の増加を求め、大学・研究機関への周知開始
・さらなる普及を目指し、来場者の情報入手手段の確認
 →アンケートの結果、チラシ・パンフレットと口コミが圧倒的多数。

*来場者数の増加に伴い、出展者から初めて「スタッフ確保の問題」、「材料コストの問題」という懸が挙がる。

【第5回:2008年10月。慶應義塾大学三田キャンパス】
■来場者10000名。出展数70。
■改善ポイント
・WS多様化に向けWS分類を明示
・参加者が選択しやすいようアイコンで可視化。→来場者から好評。
・継続的運営のため各WSでの参加費徴収を導入→来場者不満ゼロ。
・円滑運営のため来場者年齢割合、平均体験WS数、各WSの平均参加人数を明示→子どもの体験WS数が前年度比で約2倍に向上。
・WS実施者と実施希望者のマッチング機能の構築→実施者情報を公式サイトで紹介。「会場MAP」に「ワークショップ図鑑」機能を持たせる。会場に「コンタクトカード」を設置。

【第6回:2010年2月。慶應義塾大学日吉キャンパス】
■来場者35000名。出展数80。
■改善ポイント
・「高度化」対応の一環でワークショップアワードの導入→評価基準は創造性、時代性、独自性。アワード受賞歴を書くことでWS依頼が増えたとの声も。
・広報を目的とした出展者が多いため、メディアパートナー制度を導入
・WSの意義・目的を発信するためカタログを導入
・国内外の交流の場となることを目指し、海外からのWS誘致
・デジタル系WSの増加を踏まえ、ICTリテラシーゾーンを設置
・WSC自体がより協働で創造する場となるよう一体感のある会場づくり→会場全体で参加するWSを複数企画。

*「黄色いパンフレットのイベント」として子どもたちへの認知が定着し始めたと実感した頃。

【第7回:2011年2月。慶應義塾大学日吉キャンパス】
■来場者62000名。出展数87。
■改善ポイント
・混雑回避のためワークショップの基準の改訂→WS実施時間に制約設定。 
・イベントの継続実施と規模拡大を考慮し、出展料制度を導入→出展料導入しても応募数増加。
・見本となるようなプロによるWSの実施
・保護者の理解を深めるため保護者向けセミナーを実施

【第8回:2012年2月。慶應義塾大学日吉キャンパス】
■来場者74000名。出展数99。
■改善ポイント
・領域の拡張を目指しデジタルえほんアワード導入
・国際展開のきっかけとして海外視察受け入れ

【第9回:2013年6月。慶應義塾大学日吉キャンパス】
■来場者100000名。出展数100。
■改善ポイント
・国際化の一歩として国際デジタルえほんフェア併催→15カ国。海外の関連企業・団体へ周知。

*来場者数10万人突破。混雑具合が限界に達し、来場者満足度が低下。来場者数増の方針を見直すこととした。
*グッドデザイン賞ベスト100選出。ありがとう。

【第10回:2014年8月。青山学院大学青山キャンパス】
■来場者57000名。出展数105。
■改善ポイント
10万を超え、来場者数ではない目標として「先端性」「国際性」「全国展開」を設定。
・先駆性
 「世界最大かつ最高の子どもたちの創造的な学びに関する最先端が集結する場」という当初の目的通り「最先端」を意識→プログラミング、デジタルファブリケーションなど「PEGコーナー」を設置。
・国際性
 →国際デジタルえほんフェアのブースに集中し、世界40カ国から参加。
・全国への広がり
 1箇所開催での限界を感じ、全国で同時にWSを実施するクリエイティブキッズデイを開始。→初回から全国約150のWSが参画。
 
*場所と時期の変更により、はじめて来場者数が前年を下回る。しかし、来場者数増加は、出展者・来場者の満足度を下げていたため、実は第10回が出展者からの評価が最も高かった。会場の広さに対する来場者数が適切であった。

【第11回:2015年8月。新南平台東急ビル・渋谷TODビル】
■来場者69000名。出展数150。
■改善ポイント
・街全体を会場にする
 渋谷全域で11のサテライト会場を設置。
・新たな領域の開拓
 超人スポーツ、先端街づくり等、最先端の技術を活用した新たな領域の創作活動を導入。
・ワークショップコレクションのパッケージ化
 今後は、ワークショップコレクションのパッケージ化と全国展開を目指す。

 参考までに10年間に渡りとってきたアンケートによると出展者の目的は、
関連団体との交流及び連携/ワークショップの情報発信・普及/ニーズ調査・マーケティング調査/ツールやアプリ等の認知度向上・広報/テストベッドの場/ブランドイメージ向上/学生の実践の場/研究のアウトリーチ活動
となります。
また、ワークショップコレクション後の出展者にとっての成果は
ワークショップの開催依頼/他団体・企業との協働/教材化・パッケージ化/団体認知度向上/企業からの問い合わせ/テレビ等メディア出演の依頼/アプリのダウンロード数増加/ワークショップの改善
となります。

 「日本中のこどもたちに創造的な学びの場を届ける」ことを目的としたWSCは、来場者に各地域に持ち帰り展開してもらうことを意識して実施してきました。1箇所拠点での普及は10万が限界と感じ、クリエイティブキッズデイを開始。次の年にはWSCが街に出ていき、そして他地域に展開していくこととなるのです。
 特に福岡はすでに定着し、発展し続けています。今後は福岡を参考にしながら他の地域に広げていきたいと思います(*^^*)
 というわけで、我が地域でも!というアツイ想いを持った方とお会いできることを楽しみにしています。