プログラミング教育

2020.02.10
Pepperプログラミング成果発表会2020

Pepperプログラミング成果発表会2020に審査員として参加しました。
本日は全国850校から勝ち残った8チーム×3部門のプレゼン。
「身の回りで役立つPepper」をテーマとした小学校部門、「社会の課題を解決するPepper」をテーマとした中学校部門、自由テーマのフリー部門の3つのうち、私はフリー部門を担当しました。

フリー部門で金賞を受賞したのは掛川市立東中学校の「東中生の危機を救え」。
増改築を繰り返し複雑な構造となった校舎で過ごす東中生にはいま2つの問題があるという。
1つ目は休み時間に先生が見つからず連絡がとれないこと。
2つ目は校舎の端にある図書館から教室が最も遠い2年生が、1年次と比較し98%も貸出冊数が減少していること。
そこで東中生の大切な休み時間の確保と読書の充実のために本プロジェクトが始動する。
プロジェクトX風プレゼンで観客の心を捉える。
校内6箇所にPepperを配置し、顔認識により先生が通った場所と時間を記録。その情報をもとに先生の現在地を生徒たちに伝える。出張中の先生がPepperを通じて生徒にメッセージを伝えることもできる。
また、2年生が本を借りやすい場所に本棚とPepper図書委員を設置しミニ図書館を開設。本につけたQRコード情報と生徒の顔認証から貸し出しの管理を可能とした。
全校生徒538名を対象に3週間の実証をした結果、88%の生徒から高い評価を得たという。「先生と連絡がとりやすくなった」「図書館が身近になった」という数々の嬉しい声。
Pepperは生徒たちの誕生日情報も保持しており、誕生日にはお祝いをしてくれる。すでに学校の一員ですね。
見事に金賞を受賞しシリコンバレー行きの切符を手にした本チームより最後のメッセージ。
HGS(東中放送局)が放送する「プロジェクトP」は次回はアメリカよりお届けするそうです。おめでとうございます!

銀賞を受賞したのは藤枝市青島中学校の「スーパー保育士」。
子どもを保育園に預けるお姉さんの「園の様子がわからない」という不安な心と、社会問題となっている保育士の業務多忙化・人材不足を一気に解決しようと挑戦する。
着目したのはPepperの「人のようにコミュニケーションができる情報端末」という特徴。
園児自らが撮影した写真が顔認証で自動的に保護者に送られる。
警備機能も併せ持ち、不審者の侵入を感知すると警報がなるとともに、不審者の写真を自動撮影してメールを送る。
さらには、子どもたちと一緒に遊ぶアプリが複数入っている。
開発したシステムは3度の検証を繰り返した。
第1弾は、文化祭で地域の子どもたちに体験してもらう。そこでプログラムの問題を全て洗い出し改善。
第2弾は、実際の保育園で。子どもたち、保護者、職員の評価を聞くと、実際に導入してほしいという声もあったという。
第3弾は、介護施設で。なんと保育園だけではなく、すでに介護施設での導入も見据えているという。こちらも介護施設に1ヶ月導入して検証。同じく本格導入を期待する声を頂いたとのこと。
大事にしているのは、みんなが笑顔になる、安心すること。子どもと親の関係を深めてほしいという想いが伝わってきました。

銅賞を受賞したのは岐阜市立青山中学校の「曽祖父を救うPepper」。
高齢者施設に入所している曾祖母は、運動不足、認知力低下、夜間徘徊などの問題を抱えている。その一方で高齢者施設は介護士不足の課題がある。
曾祖母が楽しく過ごすためにはどうすればいいか?高齢化社会における介護状況を改善するにはどうすればいいか?それをPepperで解決する試み。
「移動性」と「可愛さ」の両方を併せ持つ介護支援ロボット。それが彼らの提案だ。
Pepperに4つの「革新的機能」を持たせた。
まず「ヘルスケア」。Pepperとともに運動をする機能を設けた。microbitを搭載したツールを持ち、Pepperと同じ運動をすることを促す。手の傾き具合などから人の動きを認識し「もっと手をあげて」など声をかける。
次に「夜間見守り」。入所者が夜中に抜け出ようとするとPepperが感知し、介護士に通知がいく。入所者が勝手にいじらないようにパスワード機能を搭載したところも苦労したところ。
他にも遠方にすむ家族に状況を知らせる「ぬくもり通知機能」や認知力を確認するための「認知力テスト」も。
曾祖母に扮した寸劇で分かりやすくプレゼンしてくれました。
曾祖母はもちろんのこと、介護士からの評価も上々。「徘徊見守りと事務仕事の両方を行わなくてはいけないが、事務仕事だけに集中できそうで助かる」「施設の利用者が健康で笑顔になってくれそう」。

今回8チームのうち、3チームが介護問題をとりあげていたことに驚きました。介護問題が小中学生にとっても身近で切実なんですね。
microbitとPepperを連動させた夜間徘徊見守り機能は3チームに共通していたこと。他にも老人性難聴の方にも聞きやすいようにPepperの声の高さやスピードを調整していたり、室温管理をしてくれたりなどの工夫もありました。

全部門が集まっての表彰式で驚いたのは岐阜市の健闘ぶり。
小学校部門及び中学校部門で金賞、フリー部門で銅賞を受賞という快挙。
小学生部門で金賞を受賞した岐阜市岐阜小学校が取り組んだのは「子育て問題を解決するペッパー」。
児童虐待相談件数が30年前と比較して100倍増加というニュースに心を痛め、子育て支援をするPepperを開発。Pepperと一緒に折り紙や絵本を楽しむことができる。小さい子どもたちが飽きないように動画の長さなども細かく設計。
学校公開で保護者や地域の方々に活用してもらって検証したところ好評価を得たとのこと。
中学生部門で金賞をしたのは岐阜市立岐阜中央中学校の「コンビニロボット定員として働くPepper」。
消費税軽減税率の導入による混乱を防ぎたい。コンビニの店員不足問題や24時間営業による労働問題に対応したい。そこで24時間365日働くPepperの導入を提案。Pepperが商品の位置をタブレットで表示して接客、QRコードを読み取り税率を知らせるとともにセルフレジ機能も果たす。英語でのアナウンスもあり外国人客の対応も可能。
ローソンの店長さんに見て頂いたところ、「留学生アルバイトの研修に使える」「深夜の防犯に役立つ」「イートイン脱税防止に役立つ」「pepperによる集客率向上が期待できる」といった評価を頂いたそう。コンビニの無人化を彼らが実現してくれそう。

日々の生活の中から課題を発見する。その社会的背景を調べ、当事者にインタビューをすることで具体的な問題点を整理する。それらを解決する独創的アイデアを考える。チームで役割分担をして開発する。現場に導入し検証する。フィードバックをもとにブラッシュアップする。
どのチームもすべての工程を粘り強くきめ細やかに取り組んでいる姿が印象的でした
プレゼンもテレビ番組風プレゼン、寸劇によるプレゼンなど多様で興味深く拝見しました。
身の回りにある課題に不満を言うのではなく、自ら解決する術を知っている、そしてそれを実行する力がある小中学生の存在は心強く感じます。
「まわりの人を笑顔にしたい」という想いが全てのプレゼンに共通していました。
ぜひ笑顔溢れる未来社会を彼ら彼女らの手で構築してもらいたい。そう思わされる1日でした。

残念ながら受賞に至らなかったみなさんもこの決勝の場にきただけですばらしいことです。
改めておめでとうございます&おつかれさまでした。