デジタル教科書

2018.03.22
DiTTシンポジウム「AI時代の教育を考える」第2弾(前編)

 DiTTシンポジウム「AI時代の教育を考える」シリーズ第2弾。AI教材の開発をしている企業とそれを導入した学習塾から9名にご登壇頂き、AIと教育について議論しました。
(メモを書いていたら長くなってしまったので前編と後編に分けて投稿。)

 登壇者は、atama plus COO中下真さん、Z会エデュース稲葉尚樹さん、メイツ代表 遠藤尚範さん、ウェブリオ代表辻村直也さん、COMPASS代表 神野元基さん、UNIVERSCHOOL代表 湯浅浩章さん、河合塾河合英樹さん。私はモデレータをつとめました。
 
 まずは各々のプレゼン。
 2017年4月創業の「atama plus」は、生徒一人ひとりの得手不得手、学習状況等をAIで分析し、「自分専用レッスン」をつくることで、学習時間を最短にする。基礎学力の習得時間を大幅に短縮することで、21世紀に必要な「社会で生きる力」を育む時間を捻出する。 つまずいた問題を繰り返し学習するのが従来の学習方法。それに対し、atama plusは、問題を細分化することで「つまずき」の原因を特定し、適切なレッスンを提示する。約2週間の冬季講習受講生の平均伸び率50.4%など効果を挙げている。

 通信教育事業で広く知られるZ会は、2015年に教室事業を担うZ会エデュースを設立。重視するのは「自ら調べ、考え、表現する」こと。
 Z会東大個別指導教室プレアデスでは、atama+を導入。情報、学習内容の伝達はAI教材の力を借り、生徒の目標設定やモチベーション維持等は講師が担う。atama+で学習履歴が可視化され、講師もコメントしやすい。AIでteachingし、講師がcoaching。 「AIか人か」ではなく「AIも人も」。

 メイツは2010年より学習塾の指導方法を模索。当初は講師対生徒1:12の「集団」指導であったが、2012年より1:3の「個別」指導に。さらに、2013年よりipadを導入し、1:6〜12の「個別」指導に切り替える。先生の役割の一部をipadに任せ、1対多の個別指導を実現。そのノウハウをもとに学習用アプリケーションを開発。学習塾専用の英検アプリは、解答履歴に応じて苦手リストを自動作成し、学習内容の指示を出す。先生は質問対応と進捗確認に徹し、モチベーション向上のためのコーチングの役割を果たす。その結果、最大24人の生徒を講師1人で対応可能となり、英検3級合格率86.7%を達成する。開発当時はリーディングとリスニング対応であったが、ウェブリオと提携しAIを導入することで、スピーキングとライティングにも対応。従来は困難であった発音の指導も可能となった他、生徒も、自発的に学習するようになっている。

 世界初の人工知能型教材キュビナを開発するCOMPASSは、2010年にシリコンバレーで起業。学習効率を研究し、個々人に最適な学習を提示するナノステップラーニングを開発。アナログ教材をAI型教材へと発展させる。リアルタイムに学習履歴をフィードバックし難易度を調整。AIで教え、先生がモチベーションを引き出す。効率的な学習により創出した余剰時間で、最先端技術を活用したアクティブラーニングを実施。ドローン、3Dプリンター、VR等を活用したワークショップを実施することで、やりたい気持ちを引き出し、「やりたい」を「できる」に変える。AIの活用を通じて、アダプティブラーニングとアクティブラーニングの両方を実現したい。AI導入に当たっては、「何をAIで解決したいのか」を明確にすることが重要である。

 最新技術を利用した新しい学びのスタイルを提示するユニバハイスクール。一人ひとりの最適な学習を提供するためにAI教材の導入は非常に効果的。映像で授業導入をし、メイツとキュビナを活用した演習授業につなげる。同じ時間で解く時間は今までの倍以上に。キュビナの活用により、2週間でテストの点数が10点から70点に。先生の役割がティーチングからコーチングへとシフトしたことにより、生徒のコミュニケーションの時間と質が向上した。生徒も余剰時間が生まれ、キャリア教育など生徒主体の探究型アクティブラーニング授業を実施。

 河合塾は、生徒ごとに異なる理解度、既存体制での個別フォローの限界などの課題に直面。その解決策としてAI教材の導入を決定。COMPASSと高校数学教材を共同開発。
 個々のスタイルやペースで学習する環境が実現。教室では、1人で学習する生徒、議論しながら学習する生徒、教え合いながら学習する生徒など多様な学びの姿が見られる。指導者側の負担も軽減。学習履歴に基づき指導できるためコーチングに使える時間が増加し、生徒の会話が人生相談にまで発展。生徒も学習時間圧縮により他の教材を主体的に学習するようになった。
(後編では議論の様子をお伝えします。)