超教育協会
- 2019.02.27
- 内閣府規制改革推進会議
内閣府規制改革会議にて、超教育に向けたインフラ整備と先端改革を、と題してお話をしてきました。
2002年、情報社会の子どもの創造力・表現力を育むNPO CANVASを設立し、プログラミング学習などワークショップを全国で展開。当時、学校の壁は高く、課外学習からスタートしました。主体的で共同的で創造的な学びを集めたワークショップコレクションには2日で10万人が集まり、民間ニーズが高まったと実感します。
2010年、学校教育の情報化を進めるためデジタル教科書教材協議会DiTTを設立。「1人1台の情報端末、教室無線LAN、全教科のデジタル教科書」の3点整備を掲げてきました。小宮山宏元東大総長が代表をつとめています。設立当時は、政府・学界からは時期尚早という批判も強くありました。
さまざまな政策を提言し、それぞれ政府のIT戦略や知財計画などに反映もされてきました。
2012年、デジタル教科書の制度整備も提言、法案も策定。その後、企業、自治体の動きも高まり、電波利用料を活用した環境整備も実現。そして6年かかり昨年、デジタル教科書のための法改正が行われました。プログラミング教育の必修化も政府方針となりました。
国会でも超党派の「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」が結成されました。会長 遠藤利明衆議院議員、事務局長 石橋通宏参議院議員のほか与野党の大臣経験者はじめ83名が参加。私ども民間アドバイザーも作業に加わり、「学校教育の情報化の推進に関する法律案」を策定し、国会提出されました。デジタル教科書を正規化する閣法による制度整備と併せて、自治体が推進計画を策定・実施する等の総合的な施策によって、自治体に委ねられていた地方財政措置の活用が進むなど、学校教育情報化が大きく進展することが見込まれます。
しかし日本の学校情報化は途上国のままです。小学校のコンピュータは5.6人に一台。10年前に7人に一台だったが、一人一台を目指すといいながらなかなか進みません。アメリカは10年前に3人に一台、日本は後進国と言っても過言ではありません。教室の無線LAN整備は34.4%にとどまっています。
学校の中でも外でもコンピュータやインターネットを使う生徒の割合は、日本はOECD最低。学校でコンピュータを使ってグループワークに取組む生徒はノルウェー82%、OECD平均45%、日本7.4%。学校の課題のためにネットを使う生徒はオランダ94%、平均86%、日本44%です。
いますべきことは、デジタル教育の環境整備。デジタル教科書やプログラミングと言っても、PCやネットがなく、そもそも使えません。はやくEdTechにいきたいがまだ遠いと感じます。国は年1800億円の予算を措置しているが、地方交付税措置で、自治体が他の用途に流用しています。それを教育分野に振り向けるエンジンが弱い。前述した国会に提案中の「教育情報化推進法」の施行により、PC・ネットの整備を進めるのがよいと考えます。デジタル教科書も制度化されるものの、紙の教科書を前提とする仕組です。これら法律・ガイドラインを見直し、利用を促進すべきです。推進法案(11条)も、教科書制度のあり方について不断の見直しを行うとしています。現場の裁量で前に進めるよう仕組みを整えてもらいたい。
次にすぐすべきことは、スマート教育の環境整備。自分の端末を持ち込んで使うBYODに向かう時期です。ようやく学校にスマホを持ち込むことを認める機運が見られますが、それを学習にも使えるように、学校ルールを改訂するよう政府が指導すべきです。また、BYODでどの端末でも学習できるようになるには、クラウドの利用と標準化が必要となります。
そのクラウドはセキュリティが厳しく、学校をクラウドにつなげないという課題もあります。先生方の働き方につながる校務の情報化も進まず、未だファクス文化。クラウド利用はごく一部にとどまります。自治体ごとの条例やガイドラインを改訂すべきですが、国が指針を示し、学校のクラウド化を進めるべきです。
デジタル教科書については著作権法も改正され整備しやすくされましたが、より重要な参考書、ドリルその他の教材は著作権処理が課題です。現在、DiTT等民間が著作権処理スキームを整備しようとしている。この動きを高めるのが現実的だと思います。
今後すべきことは、超スマート教育の推進です。世界は2周先に進んで います。PCによるデジタル教育、そしてBYODやクラウドによるスマート教育を超え、IoT、ブロックチェーン、AIなどの超スマート教育、EdTechに突入しています。
IoT、ブロックチェーン、AIなど超スマート技術がもたらすものを超教育と名付けてみました。
教科、試験、学校など、学びの内容・環境・評価を問い直す変化をもたらす可能性があります。
教科面ではAIが教科を横断する超個別学習を実現するでしょう。そのためのカリキュラム再編成も求められます。それは検定や学習指導要領の内容や存在を問うことになり得ます。
また、ブロックチェーンで学習履歴を全て蓄積することで、試験をする必要がなくなるでしょう。入試のあり方を問うことになります。
そうした変化により、学年や学校など教育機関の枠を超える学習環境をデザインすることができるようになるでしょう。学校制度のあり方自体も問うことになり得ます。
日本でもベンチャー企業を中心にAIを用いた教材を開発する事例などが活発になってきましたが、まだ初期段階です。教育AIを開発するために学習履歴などのデータを用いる必要がありますが、教育側の認識が低くガードも硬いため、AI研究者は教育分野を素通りしています。
中国はAIの教育利用を国家戦略に据え、教室にカメラやセンサーを埋めて子どもの表情や学習履歴などのデータを集め、教育改革に活かそうとしています。その教育環境を世界展開する目論見です。デジタル教育で先行した韓国も政府が教材や教育環境を先行開発して世界市場を狙っていました。日本はAI開発で米中企業の後塵を拝し、教育情報化で世界の後塵を拝しています。しかし、この分野を海外に依存するようでは国の未来を展望できません。
そこで、超教科・超試験・超学校を「実装」する産学連携プラットフォームを構築することを提案します。国内外の幼児教育、初等中等教育、大学、生涯学習を横断する教育機関と、民間企業の連合体により、世界最先端の学びの場を創出してはどうでしょうか。
○デジタル、スマート、超スマートを構成する全テクノロジーを集中投下
○産業・教育の連携強化
○学習者主体の新学習環境のデザイン
○飛び級、単位互換、講座修了認定など学校の枠を超えた柔軟な運用
○オンライン・遠隔学習と、多地点の拠点でのバーチャル+リアルな学習環境の整備
○次世代教育システム、サービス、教材等の開発と海外展開
○学習履歴等のデータの利活用
これらを通じて次世代を担う超スマート人材を育成していくのです。
教育インフラの整備、先端教育の開発など、教育と技術を融合した新しい教育環境を整備するため、昨年、超教育協会を設立しました。IT、ソフトウェア、コンテンツ系の30を超える業界団体にご参加いただき、政府にもオブザーバ参加いただいて、産官学の連携体制を組んでいる。DiTTも春にここに合流することとしています。
学校の枠を超えた未来の学習環境のデザインと実装、AI、IoT、ブロックチェーン等先端技術の教育への導入、EdTechビジネス支援などを目的としています。理研、産総研、NICTなど政府系の研究機関や外資系企業も交え、AI、VR、ブロックチェーンなどのワーキングを走らせています。特区などでビッグデータを用いた実装を望む声も高く聞かれます。
この分野を代表するオールスターのかたがたの評議員コミュニティも形成しています。この評議員のみなさん教育とテクノロジーの問題に強い問題意識をお持ちで、こうした民間のオープンで強力なコミュニティを活かすとよいのではないかと思います。
まとめると、超教育に向けたインフラ整備と先端改革を進めよう、ということ。
1.デジタル教育の環境整備
2.スマート教育の環境整備
3.超スマート教育の開発・実装
4.超教育プロジェクトの推進 ということになります。