チルドレンズ・ミュージアム

2020.08.20
メキシコ パパローテ

 チルドレンズ・ミュージアム紹介第7弾。(「子どもの創造力スイッチ」より転載。

メキシコ。子どもたちにお仕事体験を提供するテーマパーク「キッザニア」の発祥国です。そして、メキシコにはもう1つ子ども向けの巨大テーマパーク「パパローテ」があります。屋内展示面積だけで1万平方メートル。屋外も同じくらいの広さのスペースがある。圧巻です。

 幾何学図形と伝統的なメキシコタイルでつくられた建物は建築家リカルド·レゴレッタによって手がけられたもの。青、黄、緑、橙。20 万個のタイルが使われたそうです。

©papalote museo del nino/chapultepec.

 サイエンス、テクノロジー、アートのインタラクティブな展示を通じて、子どもたちの学習、コミュニケーション、協同を促進させることを目標としています。ミュージアムでは、ファシリテーターの役割を重視しており、キュエート(先住民族の言葉で「友達」の意味)と呼ばれる緑色の上着をはおったスタッフが、子どもたちの学びをサポートしていました。

 常設展示は5つのゾーンで構成されており、コレクションは展示品を中心に約400点あるといいます。どれも、子どもたちが、触って、遊んで、学べる展示です。

 ©papalote museo del nino/chapultepec.

 「私は私」のゾーンでは、人間の体と心がテーマとなっています。人体模型の組み立て、解剖の実演。暗いトンネルを通り、目が見えない体験をすることもできます。自分の体や感情を理解し、自尊心を育むのが狙いです。

 「コミュニケーション」ゾーンは、人がコミュニケーションをする様々な方法について学びます。空気の圧縮をつかい手紙を送ってみる。自分の声を録音するラジオづくり。ネットでつながったダンスゲームを用いてダンスバトル。コマ撮りアニメ。光ファイバの説明。マルチメディアの歴史を表示する電子版。通信技術が私たちの生活をどう変えてきたのかを知ることが狙いです。

 「所属する」では、子どもたちに最も近い存在である家族から、地球の植物・動物、そして最も複雑な宇宙までを学びます。博物館中央に立てられた大樹では、木を通して、そこに住む動物や虫、植物などを観察できます。蝶の動きはライブカメラ等で映し出し、巣の状態や女王蜂の動きなどを観察できるようになっていました。

 他にもたくさんの標本を通じてメキシコの豊富な植物や動物を紹介しています。卵から雛を孵す展示も。上空写真を大きく引き延ばして床に置かれており、子どもたちは虫眼鏡で見て回っています。子どもたちが太陽、地球などの洋服を着て、自ら太陽系になっています。自分たちが住む環境を守らないといけないことを学ぶことが狙いです。

 「理解する」ゾーンでは、物理、数学、科学、地質学などの25 の展示を通じて、科学とはどういうことかを探ります。静電気の実験、雷の仕組み、巨大な歯車、人が入れるシャボン玉、体重が分散されるので痛くない鉄釘のベッド。空気を制御してみる。水の流れをつくってみる。ミュージアム内は巨大なレールを使って、ボーリング玉を転がし、重心について学んでいます。

  ©papalote museo del nino/chapultepec.

 「表現する」ゾーンでは、アイデアや思いや考えを芸術、創造、発見を通じて表現する創造力と想像力を養います。和紙作り、彫刻、影絵、巨大なピアノ。いろんな素材やツールを使った工作エリアです。

 他にも、メキシコシティで最大のデジタルスクリーンもあります。333人を収容できるこの映画館は、教育映像などを流しています。考古学をテーマとした庭園も持っています。そこにはピラミッドがあり、宝探しワークショップが行われていました。屋外には様々な乗り物の展示があり、実際に乗ってみることができます。屋外ならではの風車をデザインする、凧をデザインするワークショップも。

 パパローテは、障害者や低所得者層を対象としたプログラムも積極的に行っており、ホームレスの子どもを対象としたプログラムでは数ヶ月で4000人が来館したといいます。また、移動ミュージアムも行っており、約70の展示品を運び、各地で展示やワークショップを開催しています。

 入口には協賛企業を書いた綺麗なタイルが並べられた壁が飾られており、この素晴らしい展示と普及啓発活動はたくさんの方々の支援のもとに成り立っているようです。