超教育協会

2019.10.13
【レポート】教育情報化推進法成立記念シンポジウム第二部

先日のシンポジウムの第二部のレポートを公開しました。

http://lot.or.jp/wp/project/1363/

 第二部は第一部に登壇頂いた超党派議連の先生方、文科省・経産省・総務省のみなさんに加え、横尾俊彦多久市長、Google for Education Japan小出泰久代表、COMPASS神野元基CEO、光村図書出版森下耕治部長、アマゾンウェブサービスジャパン大富部貴彦本部長に加わって頂きました。

 冒頭、私から、本シンポを主催している超教育協会の活動状況について報告しました。2018年5月に発足した超教育協会は31団体が 参画し、傘下に8000社があります。先端技術の教育活用の推進に向け、AI、クラウド、著作権、ブロックチェーン、VR、プログラミングのWGで熱心な議論・実証が進んでいます。昨年は超大学の開講もしましたが、近々、高校・大学といった枠を超えて学校のあり方を考える超学校WGも発足予定で、それは今月中にも改めて報告します。

 急遽ご参加いただくことになった多久市長であり全国ICT教育首長協議会会長である横尾先生は、「整備財源不足、地域の人材不足、ICT支援員不足等の課題分析に対する解決策を提示してきたが、教育のICT化が進まない。」と指摘されます。そして、「原因は今回の法律成立前は自治体の予算確保、必要性・有用性の認識の共有、関係機関の連携であったが、今後の課題は低価格デバイスなど、全国一斉普及を促す国としての支援策が必要な事である。すなわち調達に関する改革・規制の改革・そしてクラウド活用に向けての改革が必要。」とお話されました。

 Google for Education Japan代表の小出泰久さんは「昨年の夏にGoogleは教育へのICT投資に向け日本で組織を作り、廉価な端末に取り組んでいる。」とお話します。「Chromebookは、アメリカの教育現場で70%、世界の教育現場の50%で採用されており、セキュリティを担保した世界標準のより低価格なプラットフォームを提供していきたい。」と意気込みをお話下さいました。

 続いてCOMPASSの神野元基さんは、AI型タブレット型教材Qubenaによる麹町中学校での経済産業省「未来の教室」実証事業について説明。「Qubenaによる中学校1年生の学習効果として単元62時間が38時間に短縮でき、残りの28時間でSTEM学習や2年生の単元も実施する事ができる」とのこと。さらには「生徒自身も楽しく、教え合いながら勉強できるなど素晴らしい効果が確認できた」と説明がありました。

光村図書の森下耕治さんは、「デジタル教科書とデジタル教材(動画・朗読・ワーク・QR等)の一体活用が有効」であるとし、「デジタル教科書の目的は「新たな学びの実現化」と「誰もが学びやすい教科書を」との2点である。」と指摘されました。学習者が個別に読解活動に取り組み、全員が自ら考えた事を可視化し、グループで各自が読解した画面を見ながら、グループ内で比較、意見交換する場面を紹介。今後の理解促進が重要とお話されました。

 最後にAWS大富部貴彦さんからは教育でのクラウド利用についての説明がありました。「AWSクラウドは全世界の教育機関で活用されており、USの教育系スタートアップで資金的に成功しているトップ20社の内19社が使用している」とのこと。また「インターネットへの接続を仮想化技術を用いて分離する事でセキュリティを高めることができる。」と説明。そして、「2020年までに約60万人のIT人材が不足する中でクラウドスキル習得のためのプログラムを提供している。」とのお話がありました。

 この後討議に移ります。私は一部に続きモデレーターをつとめました。日本の教育情報化の現状については全登壇者が、「遅れているが、伸びしろがある」との認識。光村図書森下さんから、デジタル教科書の普及率が50%を超えた一方で、教育用コンピューターの台数が生徒1167万人に対し217万台の現状が報告されました。この解決の手段として、BYOD導入の必要性とその前提となるクラウド活用について議論しました。

 教育業界が世界市場をどうみているのかを問いかけたところ、COMPASSの神野さんは「中国・インドが人口増と教育の低品質のためEdtech企業が急速に生まれている一方で、日本・アメリカは教育の質が高いのでEdtech企業の求められている点が異なり、中国・インドに比較し難しい」と指摘。

 次にこの法律により日本は教育ICT化のフロントランナーに立てるかと問いかけてみたところ、COMPASSの神野さんからは「今やればフロントランナーに立てるが、5年たったら遅い。」とのこと。AWSの大富部さんは「生徒が使いたい物を使いたい時に使えて、民間が参入できる環境を作ることが重要」との指摘。グーグル小出さんは「この3年が勝負。1兆3,000億円投資すれば、1,300万人の生徒に一人一台PCが普及する」との話がありました。

続いて、教育利用に関してどのような技術に着目をしているかを問うと経産省浅野課長は「現在の技術により、何故、どうしてと言える子供を育てることが重要」、光村図書森下さんは「学校・家庭・塾等が教科書・教材と教育サービスの学習履歴データを共有したサービスと連携していくことになっていく」との見方が示されました。

 石橋議員から「法律を契機に大胆に取り組むことを政治が覚悟し、皆で取り組む総力戦が重要」との認識が示されると共に、盛山議員からは「暑い、痛いなど実際に経験することの重要性とICTを活用した教育のバランスを取っていくことの重要性」が指摘されました。

 最後に中川議員から「現場の人材育成とITC機器を使いこなす環境づくりを行いながら、進めていく我々の意思が重要」との話があり、本日のシンポジウムを終了しました。