プログラミング教育
- 2019.10.25
- 第4回全国小中学校プログラミング大会(JJPC)受賞作品
先週末はU22プログラミング・コンテストと同時開催で第4回全国小中学校プログラミング大会(JJPC)の最終審査会も開催していました。今年は昨年を上回る351作品の応募がありました。連携して推進しているU-22プログラミング・コンテストの応募数は406作品。両コンテストで合計757作品の応募となりました。
改めまして、たくさんのご応募ありがとうございました。
さてさて、本日はJJPCの結果報告です。
JJPCグランプリは小長井さん(小2)の「現実シリーズ2 渋谷スクランブル交差点信号機」。タイトルの通り、世界一複雑な渋谷のスクランブル交差点を再現した作品です。夏休みに何度も渋谷に足を運び、調査を重ねた上で制作したとのこと。本作品は、渋滞を設定することで、交差点の車や人の流れをシミュレーションすることができます。小長井さんの願いは「安全で渋滞のない交差点や信号をつくること」。これまでの自由研究であれば調査・分析して終わりであったであろう所、シミュレーターまでつくるのがいまどきキッズ。課題を発見し、観察・分析し、解決方法を提示する。恐るべき小学2年生。
準グランプリは安藤さん(小3)の「会話おたすけ音声ロボット」。こちらはケガや病気で話したり書いたりすることが難しい人に便利な会話支援ツールです。レゴでつくったグローブを手にはめ、パソコン画面のひらがな表をクリックするとその文字を読み上げてくれる。グローブは子ども用と大人用の2種類が用意されています。開発動機を尋ねると「テレビでホーキング博士を見たときに、同じような状況で困っている人の役に立つロボットを作りたいと思いました。」と目を輝かせながら教えてくれました。
優秀賞に輝いたのは澁谷さん(小6)の「Famik」。熱や病状の推移を記録できるアプリです。「病院に行った時に、熱が出た子どもを3人連れたお母さんがいて、3人分の問診票を書くのが大変そうだったので作りました。」とのこと。まず体温や症状などを入力すると、熱の推移がグラフ化され、病状の変化が表になって表示されます。熱が高くてしんどい人のために音声入力ができたり、発疹などの症状をカメラで撮影・登録することができたり、先生への伝え忘れを防ぐためのその他欄を用意してあったり、病院での問診票記入の支援となるよう利用者に寄り添った設計になっています。症状を記憶したあとは病院へ。そこでもこのアプリが役に立ちます。病院検索機能があり、診療科を選択すると現在地から近い順に病院が表示される。地図は拡大・縮小・移動ができ、地図上から病院を探すこともできる他、検索した病院の「かかりつけ病院」登録機能もあります。病状データや地図の検索結果はLINEやメールで共有もできるらしい!「看病する人や病院に行く人がお母さんからお父さんに代わったり、保育園への送り迎えの人が代わって先生と会話しなくてはいけないときなどデータ共有は便利です。」その通りですね。
病気の時って心細いですよね。そんなあなたのために病状にあわせたやさしいメッセージを送り励ましてくれるそうですよ。
優秀賞2作品目は越智さん(小2)による「まほうのぼうしと黒猫アキラとピカつむり」。越智さんの相棒黒猫アキラの分身であるまほうのぼうしが屋外の様子をピカつむりに報告してくれる。「暑すぎて外に出られない日がつづきました。そこで暑いときにわざわざ外に出ずに、家の中で温度、湿度、雨ふりかどうかがわかったら便利だなと思いました。」
屋外で気温、湿度、天気を検知してくれるのは魔法の帽子。そして、帽子がピカつむりに外の様子を伝えると、ピカつむりは、光と音でその様子を伝えてくれます。例えば15度〜25度だったら「すずしい」、25度〜30度だったら「すこしあつい」。そんな感じです。37度以上だとドクロマークとともに「そとにでないで」と注意喚起してくれるそう。
とってもオシャレさんな越智さんがこだわったのは「かわいい!きれい!」であること。たしかに帽子のデザインも凝っています。そして、雨がふったときはアメアメフレフレの音声と雨をイメージした光が知らせてくれます。でもそれだけではないんです。小さい子でもわかりやすい表示を心がけ、ソーラーパネルで電気を作り出す。人にも環境にも優しい作品です。当日のデモでちょっとうまくいかないときに首をかしげながら「あれ、おかしいなぁ。」とつぶやく愛くるしい姿が忘れられません。作品制作にあたっても、「はんだでやけどしちゃったけれど頑張って完成させた」そうです。
優秀賞3作品目は平野さん(中2)の「Let’sえいごパズル!」。平野さんは3年連続での入選です。毎年確実にレベルアップしています。
今年の作品は、キューブを動かして遊びながら学ぶ英語パズル。小さな子が楽しく遊びながら英語を覚えることを目的として作ったとのこと。3つのボタンと5つの小型ディスプレイ付きキューブが設置されたパズル台を使って英語を学んでいくゲームです。
パソコンに表示されるイラストの単語を、一文字づつアルファベットが表示されているキューブを並べ替えて回答していきます。例えば、猫が表示されたら「C」「A」「T」の順番にキューブを並べられたら正解。ゲームには「動物」、「食べ物」、「その他」の3つのステージが用意されており、さらにそれぞれに簡単と普通の2種類の難易度が設定されています。簡単モードでは画面に絵と日本語訳と英単語が表示され、普通モードでは英単語は表示されません。試作版を作った際に、英語を知らない小さいこどもがまったく遊べなかったのを見て、英単語を表示させる簡単モードを用意したそうです。実地テストしているのもすばらしい。また、発音を何度でも聞くことができるという設計も、英語学習に良いですね。
「感動したのはこのキューブの設計も制作も自分でやったことです。」とお母さん。家にレーザーカッターまであるそうで。
試行錯誤を繰り返しながら制作した本作品はVer.4とのこと。何度も作っては試してもらい、キューブの形状もゲームの設計も繰り返し変更してきたそうです。
東京ビッグサイトで行われたMaker Faire Tokyo 2019に出展してたくさんの人に遊んでもらったそうで、一般展示に耐えられるレベルまで完成度をあげているのがすごい。
惜しくも受賞はのがしたものの入選作品もどれも秀逸です。
小川さん(小6)の「未来のごみ箱~CANBO~」の解説には驚きました。「機械学習を使ってゴミを分別することができます。」だそうです。さらに自走機能がついていてごみ箱から近づいてきてくれるんですって。えっ?どういうこと?思わず「やってみせて!」と頼んでしまいました。
まずごみ箱の前に手を出すと走行中のゴミ箱が止まります。CANBOカメラの前に「ビン」を見せると「ビン」の蓋が開く。「缶」を見せると「缶」の蓋が開く。ごみの種別を自動判別してくれるんです。たくさんのゴミの写真を撮影して機械学習させた成果とのこと。
「スマートガバナンス」の一つとして「ごみ収集」をテーマに選んだとのこと。「快適で住みやすく地球環境にも優しいスマートシティが実現したい」との想いでつくったロボットだそうです。
「げきむずクレーンゲーム」をつくったのは白川さん(小5)。「イチゴジャムとメイプルシロップを使ってクレーンゲームを作りました。」この一文だけでワクワクしますね。まるで本物のクレーンゲームのように、お金を入れるとスタートし、青ボタンでクレーンを動かして、赤ボタンで賞品をキャッチ。その後は自動で賞品は出口に落とされます。大きな電子工作への挑戦ははじめてとのこと。だいぶ大きな電子工作で、会場で一番目立っていました。
タイルの世界を開拓するゲーム「TILES」を作ったのは井上さん(小6)。開拓したいタイルを選び、メニューからアクションを選択することで、道をつなぎ、開拓レベルを上げ、村から街へと拡大していきます。音楽は昼、夜の時間帯によって音色を加工するなど、ゲームの世界観に合うように細かい部分までこだわったそうです。
森谷さん(小5)が制作した「STAPLER」は、ゲーム内のホチキスを何度もカチカチと押して沢山の芯を集めるというユニークな作品。最近の小学生は忙しい。ゲームをやる時間はない。あったとしても急かされるようなゲームはやりたくない。そこで、ちょっとした時間にハッピーな気持ちになれるゲームを作ったのだそうです。最近学んだ脳科学で、行動の動機は顕在意識が10%、残りの90%は潜在意識によると知り、何気ないゲームの時間でも「うまくいった!楽しかった!ラッキー!」という前向きな感情を潜在意識として貯めることが前向きな行動につながるのではないかと考えたのだそうです。
ホチキスを押した時の効果音は実際の音を録音し、カチカチという押すリアルさや芯がプッと飛び出す感覚も本物らしさを追求しています。「本物のホチキスをカチカチするのが気持ちよいですが、大人に怒られるし、エコじゃないと感じて気分が良くはないので、バーチャルなら存分にカチカチできて気持ちが良いです。」
パズルゲーム「ぺんき屋さん / PAINT!」を作ったのは荒島さん(中3)。四角いキャラクターを操作して、ブロックを吸い取ったり、塗り潰しながら進むパズルゲームです。モードを切り替えて、パソコン、スマホの両方で遊べるようになっています。はじめての人でも簡単に遊べるように丁寧なチュートリアルと、沢山のステージが用意されています。チュートリアルやゲーム構成は、パソコンクラブのメンバーに実際に遊んでもらい、意見を参考にしながら何度も改善を重ね、時にはゼロから作り直しながら完成させたそう。とことん遊ぶ人の視点にたってつくられた作品です。
最近の小中学生の視野の広さには驚かされます。先端技術を活用したSDGsの達成はこの世代に考えてもらったほうが良さそうですね(^^)
参加者に皆様、審査員の皆様、関係者の皆様、どうもありがとうございました!