超教育協会
- 2020.04.16
- 超教育議論@超党派教育ICT議連総会
昨日は、超党派の「教育ICT議連」総会が開催されました。有識者アドバイザーとマスコミの総勢40名はウェブ参加です。
いつも厳格に守られる会議時間が30分以上延びるほど白熱した議論が繰り広げられました。それはもう「教育ICT化」議論ではなく「超教育」議論でした。学校に通い、教科書を開いて、先生が教えてくれる。その前提が成立しないアフターコロナ教育を考えるべきではないか。そういう議論です。会議の様子をメモします。
現在の整備状況は5.4人/台。それが2019年6月に開催された前回の総会で「令和5年までに1人1台」の目標が提示されました。そして、今回の緊急経済対策で一気に1人1台を達成。10年来の課題がいっぺんに解決しそうで、半年前までの状況から見ると夢のようです。デジタル教科書の提案をしたら「紙のにおいが大事なんだ!」って国会議員先生にお叱りを受けたのは数年前のことです。もうその時点でネットを通じて紙のにおいも配信できる技術すら商用化していたのに。
議連の先生方や政府関係者のご努力に、改めて感謝と敬意を表します。
冒頭、遠藤利明議連会長が「令和2年度補正予算により全小中学生がタブレットを持ち、学校でも家庭でも学ぶことができるようになる。日本をICT教育大国にしたい」と挨拶しました。
続いて、文科省・経産省・総務省から令和元年度補正予算の進捗と今年度補正予算案について説明。
今年度の補正予算案には、緊急時における家庭でのオンライン学習の整備予算が盛り込まれています。具体的には家庭学習のための通信機器整備支援、学校からの遠隔学習機能強化等。経産省も遠隔教育・在宅教育普及促進事業、総務省も学校教育・在宅学習のための情報通信基盤の整備に予算がついています。
文科省は「コロナでパラダイムシフトが起きた。誰一人取り残さない教育環境をどうつくるか。これを機会に、学校と家庭をつなぐ機運を盛り上げていきたい」。
そこから議論が盛り上がります。
馳浩元文科大臣が指摘したのは、1「EdTechの成績評価のあり方」、2「校務支援システムによる教員の働き方改革」、3「標準授業時数の見直し」の3点です。
1.EdTechの成績評価は不登校児童の支援にもつながる。家庭学習も成績評価として認める方針が示されたが、EdTechの成績評価も今回を突破口にすべき。
2.持ち帰り可能な1人1台端末と校務支援システムと連携させれば、教員の働き方改革にもつながる。さらには学習履歴をビッグデータとして活用することもできるようになる。それは現場にとって効率的で良いということを、EdTechの先行導入自治体のデータ等を公表して、文科省はもっと強く示すべきだ。
3.標準授業時数のあり方についても、このEdTech導入のタイミングで中教審に諮問し議論をすすめるべき。GIGAスクール構想が推進され、ICT環境が整備されることで満足せずに、次の段階を議論すべき。
それに対し、文科省からは、「4月10日の局長通知は、正規の教育課程に則ってる家庭学習が前提。しかし、今後の学習評価のあり方は標準授業時間数も含めて中教審で検討する」という回答がありました。
城井崇議員は「頭の切り替えが必要。我々の法律もポストコロナ社会を念頭に置いて考える必要がある。新型コロナウイルス感染症が長引くかもしれないし、他の災害があるかもしれない。今後の教育の継続を考えると、学校教育を中心に置き、学校で、教室で、生の先生と学ぶこれまでの当たり前の教育を前提にすることはできない。ホームスクーリングを中心とした学びを前提にしなければならないタイミングである。小手先の対処では乗り越えられない。」と指摘します。
そして、それを実現する方法として、1「民間の教育サービスと学習指導要領の接続」、2「デジタル中心の考え方」、3「家庭の通信費負担」の3点をあげました。
1.学習指導要領と照らし合わせて、ホームスクーリングでEdTechを活用して成立するよう内容につくりあげるべき。
2.紙の教科書とデジタル教科書の並列から、デジタル中心にシフトすべき。
3.義務教育で通信費を各家庭で別途負担させてはいけない。
「ハード面の整備はGIGAで進んだとしても、最後に課題として残るのは家庭での通信費の問題。就学援助の費目としてあげるなど、国の横連携をしっかりして紙の代わりにデジタルが届くことを保障してあげたい。」
岡本議員も家庭の通信環境に言及します。「モバイルルータは貸与されても端末がない家庭の支援がない。在宅勤務中の親もケータイを必要とする中、親のケータイを子どもに貸せる状況にはない。国が一括して端末を直接貸与する方が早いのではないか?」
文科省は「学校教育のあり方は対面授業が基本であり、それをいま崩すつもりはない。しかしこの状況が長引くことは予想されるため、指摘に近づけるよう検討したい。」
「電子デバイスで学校と家庭でつなぐことは現状では非常に厳しく、実現できているのはごく一部。まずはその条件整備を急ぎたい。コンテンツに関しては、教育課程に沿ったデジタル教科書が中心となる。しかしデジタル教科書も金額の課題がある。実用化に向けて検討を進めたい。」
「通信費の問題は、最後にこの問題にいきつくため様々なシミュレーションをしており、なんらか手当したい。令和2年度の補正予算の家庭の通信機器整備予算は147万人の家庭に届ける金額。それは、ネット環境が整っていない家庭が2割未満という数字に基づき、2割の家庭に届ける金額。端末は学校から貸与する。」
教育情報化は学校の環境整備が論点でしたが、コロナを機に家庭環境が主要テーマに浮かび上がってきました。
中川正春元文科大臣は「フェーズが変わっていく。短期的な対応も必要だが、長期的な絵をどう描いていくかが大事。」とした上で、省庁の役割分担への違和感を示しました。
「本来は、ハードが総務省・経産省、コンテンツは文科省であるはずが、現状では逆になっている。幹の議論が抜けて、周りだけがもりあがっている。文科省が教科書を中心にコンテンツをコントロールしながら推進し、それを経産省がサポートするべきところ、経産省がコンテンツをリードしている。いまは緊急事態だから仕方ないが、その先は整理すべき。文科省が中心になってしっかり幹をつくるのが大事。」
これに対し、3省からコメントがありました。
文科省「キラーコンテンツはデジタル教科書、そしてそれを有用なものにするデジタル教材だと考えている。それをしっかりと固めたい。」
経産省「文科省が学校、経産省は民間の学習支援業を所管。学校ワールドと民間ワールドの重なりあうところで学びのイノベーションが起きると考えている。 堅牢な隙間のない学校教育に対して、学校と違うアプローチで楽しく面白く学ぶ民間のイノベーションを応援している。それが学校の先生の次のモデルになる。大変な国家プロジェクトが動き出しているので、ソフトの部分は民間教育で頑張りたい。平時に戻った後も、両者で協力しながら推進したい。」
総務省「通信インフラは学校までは総務省。学校内は文科省。新しい技術の導入は、総務省と文科省の連携で推進。今後も連携しながら進める。」
馳元文科大臣は、さらに議論をふっかけます。
「教科書はいるのか?毎年450億円かけて教科書を配る必要はあるのか? 学校の図書として置いておいて、各クラスに貸し出すのでよいのではないか。デジタルだったら1人1台に全て入る。今までの発想を大転換するべき。 学習指導要領、教科書検定はしっかりと踏まえるべき。しかし、それを踏まえた上で、教材のあり方は柔軟に対応すべき。学年を越えて、教科を越えて教材は開発できる。
学力テストも毎年50億使う必要があるのか?この超党派議連ではこれまでICT化を推進してきた以上、そこまでしっかりと議論をすべき。」
文科省「貸出教科書を置いてデジタル教科書を持ち帰るのは理想形。しかし、いまはデジタル教科書は紙よりはるかに高価。また、教科書のPDFでは意味がないため、その価値を高めるデジタル教材の用意も必要。
学力テストは宅配便のコストが占める割合が多く、情報活用能力に難があるという結果も踏まえて、今後はCBT化をはかりたい。」
石橋議連事務局長「法律の目玉は新しい時代のデジタル教科書をつくることだった。検定教科書をデジタル化することではない。フェーズが変わった。我々の思考する新しいデジタル教科書を考えるべき。」
「この法律はデジタル教科書を盛り込むために想定よりも時間がかかった」、と遠藤議連会長。「全国一律同じ体制をつくらないといけないと考える文科省とそれを壊す経産省。考え方、手法の違い。文科省、総務省、経産省の3省での人事交換を提案している。文化を交流して、それぞれの良さを活かして、はじめてコトがまわる。総務省と文科省はすでに取り組んでいるが、経産省も文科省にぜひ。」
中川元文科大臣「大災害をテコに新しい社会をつくる。これを機会にひとつがんばっていこうではありませんか。文科省、腹をくくって、革命を起こしましょう。」と叱咤激励をして閉会となりました。
超教育協会は、キャッチアップである教育ICT化=インフラ整備と先端改革の両方を推進すべきと主張してきました。先端改革は「超教育」の構築であり、それはまさに本日の議論にあったアフターコロナ教育といえます。
コロナのレガシーは、教育ICTの進展、しかも学校のICT化から家庭のICT化にステージが移ると思っていましたが、さらに次に進むのかもしれません。
日本を教育ICT大国、いや超教育大国にできればと願います。