デジタルえほん

2013.07.18
パパママのアイデアから生まれたデジタルえほん

デジタルえほんアワードインタビューシリーズVol.12

「パパママのアイデアから生まれたデジタルえほん」

 「かわいい(赤ちゃん)」と「くさい(うんち)」をくっつけて、「くさかわいい!(意味=くさくっても君のにおいなら好き)」。「かわいい」と「ホニャララ」を足すことで、「かわいい」の新しい楽しみ方を親子に伝えるアプリ「ホニャかわ」が企画部門審査員特別賞を受賞した。企画をしたチーム我ら代表の山本鷹生さんにお話をうかがった。

 「iPhoneも持っていなくて、触ったことすらなかったんです。」と山本さんは語る。アプリとは何か?ということも知らなかったというのだ。ましてやデジタルえほんという言葉など聞いたことすらない。知人に教えてもらってたまたま知ったデジタルえほんアワード。「あ、面白そうだな、と」
「日本文学科を卒業していて、言葉が好き。特に造語が好きで・・・・・」
 企画をした当時、山本さんのお子さんは生後5ヶ月。「親バカ的実体験を元に着想を得ました。」と穏やかに笑う。「おしめ替えるときに、子どもがうんちしていて、「あぁ臭い」と思うのだけれど、妻と一緒に、臭いけどかわいいね、「くさかわいいだ!」と笑い合って。」

 アプリのイメージもまさにその時の様子を再現したものとなっている。
 はじめのページは、赤ちゃんとパパの絵。赤ちゃんにタッチをすると、笑い声とともにニコリ。次のページでは、赤ちゃんが踏ん張る。絵にタッチをすると、赤ちゃんが揺れて揺れて、ふんばってふんばって、うんちがコロコロ。そして、「プワワワーン」というシンセサイザーの音。最後のページでは、パパが赤ちゃんを抱きしめながら一言。「くさくてもキミのにおいなら好き。くさかわいい!」。絵にタッチをすると、赤ちゃんからは破線3本のニオイのマーク、お父さんからはハートマーク。まさに親バカ。

 「ホニャかわ」は他にもたくさんある。お父さんがビールを飲むところを赤ちゃんが「ぷはー」と真似て「まねかわいい(ものまね+かわいい)」。赤ちゃんがすべって転んで「おどじかわいい(どじ+かわいい)」。サラダにドレッシングをかけるかマヨネーズをかけるか迷う赤ちゃんに「まよかわいい(まよう+かわいい)」。
「アプリというものをよく知らなかったが、きっと、新しいコミュニケーションツールなのだろうと漠然としたイメージがあった。だから、イメージしたのは、ある造語アプリがあって、お母さんとこどもがそれを見てくすっと笑いながら楽しむ姿。例えば、ご飯のときに、子どもが勝手に新しい造語を考えて、「それ、面白いね」と笑い合う。そういうコミュニケーションのきっかけになれたらうれしいなぁと思いながらつくった。」今回の企画をつくるにあたっても、奥さまとたくさんの造語を出し合い、笑い合ったという。

 「かわいい」にちょっとした言葉を付け加え、それを絵とともに見るだけで、ほんのり心があたたかくなる。一口に「かわいい」といっても色々なものがある。一般的にはネガティブな言葉も「かわいい」と結びつくことで、ちょっぴり新しい意味が生まれ、より具体的に、かわいいよりちょっと強めの「かわいい」を感じることができる。それが多様な価値観を受けとめる心の種となる。
子どもたちは新しい言葉を作るのが好き。「子どもたちが自らいろんな「かわいい」を発見し、造語にしてもらいたい。それを投稿してもらって、面白いものは絵を付けてHPに掲載して。みんなで造語をつくって笑い合うのも楽しい。」

 この企画も言葉好き、絵本好き、音楽好きが集まってつくった企画だ。みんなの創造性が合わさって受賞に至った。「アイデアもあれば、いろんな人と協力もできる。」 チームのモットーは友人からもらった言葉、ユーモディア(ユーモア+アイデア)だという。
 アワード受賞から1年。1歳7ヶ月になったお嬢さんはイヤイヤ真っ盛り。電車に乗っていて、ぐずりだすと大変な騒ぎ。奥様は、気を使って途中で降りたりする生活を送っていた。そこで山本家にもiphoneが導入され、子どもにデジタルえほんを見せているという。泣くのをやめて夢中で触る姿に、ほっと胸を撫で下ろす日々とのことだ。