超教育協会
- 2020.09.24
- 文科省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」メモ
先日発出したステイトメントに「デジタル教科書を、義務教育段階の全児童生徒に無償給与する。併せて、デジタル教科書の使用は各教科等の授業時数の2分の1未満にする規制を撤廃する。」ことを盛り込んだところですが、文部科学省のすでに3回実施されている「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の委員に途中から就任することとなりました。というわけで初参加。 (第4回会合)
昨日は、日本眼科学会、日本眼科医会、日本医師会の方々から、デジタル教科書を1/2以上活用した際の問題点・留意点のヒアリングをする会でした。プレゼン資料がすでに公開されているので詳細は資料をご覧いただければと思いますが、「書籍を見る距離が30cmに対してスマホは20cm。」、「学校外における長時間利用が生活の乱れにつながる。」、「屋外活動が減ると近視につながる。」、「30分以上持続して読書をすると近視になりやすい。」、「スマホの長時間使用が学力を低下させ、長時間のインターネット利用が子供たちの脳発達を阻害するという科学的エビデンスがある。」といった意見が出されました。
https://www.mext.go.jp/…/shotou/157/siryo/mext_00004.html
私は、昨日の会議では「1/2規制撤廃への道筋を作る!」という勝手なミッションを持って参加したので、3点について質問をし回答頂きました。
1.本とデジタルの扱いの違いは?
・30cm離せば目への影響は紙もデジタルも同じと解してよいか?
・紙の読書も30分以上の持続は近眼という視点からは推奨できないと解してよいか?
・本も近視になるなら、本の対応はどうしていたのか?(本との違いはなにか?)
【回答】タブレット等の大きい画面を使っている分には本との違いはない。
2.屋外時間と近視の関係は分かったが、デジタルと近視の関係はある?
【回答】長期的結果はまだなく、エビデンスはまだない。
3.もしインターネットが脳の発達を阻害するというエビデンスがあるなら、世界でも活用を抑制しているはずではないか?なぜそうなっていない?
【回答】東北大学の調査で脳の発達への悪影響のデータがでている。海外からそのようなエビデンスが出てこない理由は、日本のようにMRI機器が普及しておらず、それが故にデータが取れないからではないか。
つまり、
・スマホではない大きな画面の端末で30センチ離して使えば紙と変わらない
・学校での活用に関しては問題はない
・海外での共通エビデンスは現時点ではない
(・&外で遊ぶのは大事!)ということ。
これまで身体への影響に関しては不安な声が多数あったわけですが、このように専門的立場の方から明確に回答頂くことができ、私はスッキリしました。(なお、脳への悪影響のデータが、MRI機器普及の問題で日本だけが検証できた結果なのであれば、それは素晴らしい成果であり、人類にとっての警鐘でもあり、国際的に広めるべきだと思います。なぜそうなっていないのでしょう。)
上記、質疑応答をさせて頂いた上で、「1/2規制の導入理由が不明と感じる。撤廃し問題が発生したら対応を考えるのが通常ではないか。段階的に規制緩和をすることもありえるが、その場合には「根拠」が求められる。もし1/2規制導入の目的(抑制したいものはなに?)と根拠が不明なのであれば「すぐ」見直しすべき。いまは使いすぎて困っているのではなくデジタルの活用が進まないことが社会的な課題。だからこそ多額の予算がつきGIGAスクール構想が進んでいる。利活用が進むよう後押しすべき。」とコメントしました。
文科省・座長からは「定量的なエビデンスはなく、健康への不安・懸念の声が多い中で慎重に導入した。」「デジタルをどこまで許可するかという制度的バランスをとった。」という回答がありました。とてもよく分かります。
いまは当時よりも議論も導入も前進している状況を踏まえ、速やかな規制撤廃をのぞみます。
もう1つ議論したかった「デジタル教科書無償化」については、「令和6年度という時間的制約もある中での議論に関しては、できるだけ多くの子どもたちがデジタル教科書を活用して学ぶ環境を早期に実現することを優先し、デジタル教科書の無償給与をするのがよい。また、併せて、デジタル教科書をデジタル教材や様々なデジタルコンテンツと連動して使うことができるよう、さらにはデジタル教科書を活用して子どもたちの学習データを取得しより豊かな学びを実現できるよう、次の教科書改訂に向けて制度の整備をするのが良い」とコメントしました。
補足ですが、医師代表から「200ページの本を読む際に紙だとめくればいいだけだが、デジタルだと200ページまでスクロールしなければならず、スクロールにより目が悪くなる」という発言などもありました。私はまずは現状のデジタル教科書やデジタル機器がどういうものかを共有した上で議論しないと歪んだ議論になると感じました。
参考)アフターコロナ教育推進ステイトメント https://lot.or.jp/wp/report/2366/