その他
- 2020.10.26
- プラチナ大賞受賞団体
プラチナ大賞受賞者のみなさま、おめでとうございます。
http://www.platinum-network.jp/
プラチナ大賞・経済産業大臣賞はGlobal Mobility Serviceによる「世界の貧困層・低所得層17億人を救う金融包摂型FinTechサービス」。ローンを活用できず車が購入できない人が17億人いる。真面目に働いていて返済能力があるのに、与信が与えられない層にローン提供をする仕組みを構築したのがこのサービス。具体的には、遠隔でモビリティのエンジン起動制御可能なIoTデバイスを車に設置。ローンの返済が滞った場合には遠隔で車両エンジンの起動を止めることで、支払いを督促できる仕組みを構築。これにより、これまでローンが組めなかった貧困・低所得層のタクシーや物流等のドライバーが仕事を通じて収入を得ることができるようになり、自力で貧困から抜け出すことが可能となったといいます。また、働きぶりを可視化することで、新たな信用を創造し、教育ローンなど新たなファイナンスの機会を創出しています。すでにフィリピン、カンボジア、インドネシア、日本で事業展開をしており、サービスをはじめて3年で累計走行距離は1.8億キロ(地球4500周)だとか。グラミン銀行を思い出しつつ、このような持続可能なSDGsに貢献するサービスは素晴らしいですね。「頑張る人の人生を変える」という言葉が響きました。
プラチナ大賞総務大臣賞は神奈川県の新型コロナ対策。黒岩知事のプレゼン。ダイヤモンド・プリンセス号の件から新型コロナウイルスに対する脅威を強烈に実感していたからこそ、3月よりLINEを活用した新型コロナ対策パーソナルサポートをスタートさせました。感染者が発生した場合にLINEでメッセージが送られたり、AIが自動回答してくれたりするサービスを約95万人が利用。2018年よりLINEと包括協定を結んでいたことがスムーズな対応につながったといいます。その後、全国知事会で提案したことをきっかけに全国33都道府県へ導入されました。データにより問題点が可視化されるため、データに基づいた対応が取れる。地域ごとの状況も把握できる。今後はDeNAと連携し、横浜スタジアムでのプロ野球試合を満席でトライする予定とのこと。スタジアム3万人全員の行動をLINEを活用して把握し一人ひとりに適切な行動を促すメッセージを送るとともに、顔認証カメラを活用してマスクの着用状況を把握する等、先端技術の導入により「満員プロジェクト」を実施するそうです。オリンピックに向けた一歩となると意気込みを語ってくれました。副知事からは「ITを使って国民・県民の命を守ろうという取り組みは今回がはじめてだった。」というお話がありました。「これまでの感染症対策は、ワクチン生産など医療の提供側からのアプローチだったが、今回は国民県民の自律的な行動が求められた。行政としても今後は国民・県民からのデータを活用した政策立案が求められる。複合的な社会的課題に対してマクロのデータから縦割りで解決するのではなく、個々人の問題として捕まえて政策に役立てていきたい。」自治体が当たり前にやるべき話なのではないか?という意見もありつつも、それを確実にスピード感を持って取り組み、全国に影響を与えた事例として高く評価されました。
惜しくも大賞は逃したものの気になった事例をいくつか。宮崎県都城市の「おくやみフルサポート事業」。おくやみ窓口利用者は、必要な手続きの正確な把握が極めて難しく、何度も来庁する方が多い。平均5課に渡り10手続き、最大では10課16手続き!そこには縦割りの弊害があると指摘します。それぞれの課で、状況説明、申請書の記入、本人確認等の重複事務があり、遺族にとっても行政にとっても負担が大きく非効率的。そこで、交付率1位を誇る都城市らしくマイナンバーカードを活用し、役所内の縦割りを解消し、手続きの簡素化と一元化を実現したところ、役所での滞在時間が30%以上削減されたといいます。さらには再来庁も減り、体感としては50%以上の手間削減を実現。次に、役所の縦割りのみならず、街の縦割りの解消にも乗り出します。銀行、電力会社、携帯電話会社、ガス会社、農協等と連携することで、街のおくやみ関連手続きを一元化します。結果として、それが休眠口座、空き家対策や粗大ごみの処理等、死亡に関して発生する各種社会問題を解決する一助になる。今後は、官民連携により、死亡の際に遺族が把握すべき情報を生前整理ができるよう情報銀行機能を活用していくといいます。「社会の縦割りを突破する」取り組みとして興味深いです。
株式会社T-ICUが取り組むのは遠隔ICU。日本はICU及び集中治療医不足という課題を抱えている。人口10万人あたりのICU病床数は米国の1/3。集中治療専門医は医師の0.5%。さらには、その医師は大都市に集中しており、7割の病院に専門医はいない。そこで専門医をサポートセンターに待機させ、遠隔から現場の医師や看護師に助言をし、支援する遠隔ICUに取り組む。専門医が一般医師をサポートするDtoDのビジネス。米国ではこの仕組は20年前にスタートしているそうです。遠隔ICUが広がることで診療の効率化、医療コスト削減につながる。今後は遠隔救急支援、遠隔麻酔の分野にも応用していくと同時に、日本の先進医療を世界へ広げていく予定とのこと。コロナ禍で教育、行政とならびデジタル化の遅れが顕著に現れた医療分野の進展に期待したいです。「私たちには救える命がある」。みなさん、キャッチフレーズがいいですね。
線虫がん検査「N-NOSE」は線虫の匂いに対する指向性を利用し、がん罹患の有無を検査する。1滴の尿で検査できる。低コストで簡便、苦痛なく、高精度で早期発見につながる。生物×医療という異端のイノベーションにより世界初がん一次スクリーニングを社会実装。
埼玉県。貧困の連鎖を断つため、子ども食堂や学習支援教室など、子どもの居場所づくりを推進。県内に800箇所を目標に、子どもの居場所をつくりたい人とサポートしたい企業をマッチングする仕組みを構築。緊急事態宣言時には、休校に伴う余剰給食食材など約37トンの食材をマッチングし、すでに388箇所を設置しているとのこと。県をあげての取り組みを成功事例として横展開していただきたいです。
和歌山県の「お身代わり仏像」。仏像等の文化財の盗難被害があとを絶たない。その要因の1つに集落の過疎化・高齢化によって村の人車の仏像が維持・管理できなくなっていることが挙げられる。地域の人々が地域の文化財に関心を持ち守るための体制づくりに取り組んだのがこの事例。具体的には大学生・高校生が3Dプリンターでお身代わり仏像を制作して神社に奉納し、本物をミュージアムで保管する。これまでに15箇所の神社に29タイのお身代わり仏像を安置したといいます。学生ふくめて地域の歴史・文化を地域コミュニティでみんなで守っていく取り組みとして高く評価されました。学生がつくったお身代わり仏像が本物と見分けがつかないレベルで驚かされました。
リモート発表された小豆島のまち磨きプロジェクト。ピーク時と比較して人口が半分に減少し過疎化が進む小豆島が重視するのは「まちおこし」ではなく「まち磨き」、「観光」ではなく「歓光」。路地が多く迷路のような街全体を「妖怪」と「折り紙鶴」で活性化。観光客が5年で5倍に増えたといいます。日本文化をテーマに持続可能な課題解決に挑む個性的な取り組みで今度訪問してみたいと思います。
水素エネルギーへの転換でプラチナ社会を実現する川崎市。世界に羽ばたく子どもたちの育成に取り組む愛知県高浜市。冬の寒さを活用した効率的農業を提案する農研機構。建設工事の環境配慮・働き方改革に取り組む大成建設。10年以上にわたり環境エネルギー、産業振興、モビリティなど多分野で包括的にまちづくりに取り組んできた北海道上幌町。行政と鉄道事業者が共同し駅前空間の魅力を再構築した南町町田グランベリーパーク。などなど他にも素晴らしい事例がたくさんありました。私もプラチナから学びます。