超教育協会

2020.12.03
ブロックチェーン×教育

最近、ブロックチェーン×教育に関するオンラインランチシンポを多く実施しているのですが、というのもよくわからないのですよ。ブロックチェーンをどう利用すればいいのか。分からないならひとまずやってみようということで超大学でブロックチェーンを実装すべく動き始めようと思います。

今日は、内閣官房IT室×新経連の会議でそんなショートプレゼンをしました。超教育実現にあたりブロックチェーンが重要な役割を担う可能性が気がするけれど、「ブロックチェーンとは何かがわかりにくい」というのが最大の課題ではないかと思いつつ。

超教育教会は、IoT、ブロックチェーン、AIなど超スマート技術がもたらすものを超教育と名付けています。それは、教科、試験、学校など、学びの内容・環境・評価を問い直す変化をもたらす可能性があります。

教科面ではAIが教科を横断する超個別学習を実現する。そのためのカリキュラム再編成も求められる。それは検定や学習指導要領の内容や存在を問うことになり得る。

また、ブロックチェーンで学習履歴を全て蓄積することで、試験をする必要がなくなる。入試のあり方を問うことになる。

そうした変化により、学年や学校など教育機関の枠を超える学習環境をデザインすることができるようになる。学校制度のあり方自体も問うことになり得るわけです。

 さて、ブロックチェーンの教育への活用ということでいうと、超教育協会でも2018年からブロックチェーンWGを立ち上げ議論をしていましたが、途中でとまっています。時期尚早?という感覚があったから。

諸外国の取り組みを調べた感想は下記3点。

1.国や都市単位での社会実装事例はシンガポール、マルタ、マレーシア、米国コロラド州など限定的。その一方で、中国やベトナムが国をあげてブロックチェーンの教育活用を検討するなど気になる動きもある。特に中国はコロナ禍でオンライン教育が急増をしたことを受けて、ブロックチェーンへの関心が高まっている。

2.多くが証明書発行にとどまっており、教育システムを抜本的に変革するような利用の事例は限られている。(コンテンツ作成・流通による個別最適化教育やトークン付与による学習インセンティブ促進等の事例がチラホラと。

3.学歴詐称が社会問題となっている地域では、証明書発行においてブロックチェーンの導入の検討が進んでいる。日本においてそのニーズがどれほどあるのかは疑問

ブロックチェーンを活用した卒業証明書の発行等もその利便性はわかるものの大幅なコストダウンにつながる等がないと広がらないのではないか?それよりももっと教育の破壊的イノベーションにつながるような、いわゆる教育DXにつながるような利用方法はないか。

超教育内で議論をした際に、出てきた案はこちらです。

学歴履歴を含むすべての学習履歴を記録することで、自由度の高い学習環境・進路設計が可能となるのでは?それが学歴社会から学習履歴社会へつながっていくのではないか。

講義や教材を取引し単位を与えられるような新たな教育マーケットプレイスが構築できるのではないか?教育における著作物の利活用が円滑になるのではないか?

これまでは評価の対象としにくかったような個人活動も可視化できるのではないか。

研究に関して言うと、論文やデータを適切に管理するとともに、引用論文からの承認・通知等を通じて、研究活動の活性化できるのではないか。

正直なところ、私は超教育が構築できるのであればブロックチェーンを使おうと使うまいと構わないわけです。しかしながら、教育の分野は新しい技術の導入が遅れがちです。であればブロックチェーン導入を前提に議論をしてみてもいいのではないかということで話し合ってみました。

しかし、はじめに書いたようにどうやって実装するのかリアリティがわかない。であれば実装してみようと思うに至りました。昨年から超大学というのをはじめまして、大学の枠を超えて学ぶ新たなコミュニティづくりなのですが、超大学においてブロックチェーンを導入してやりたいことを実装してみようと議論をはじめたところです。

超教育は学びの内容・環境・評価を問い直す変化をもたらす可能性があると書きましたが、その3つに合わせて、どんなことを超大学で実現したいかと考えると

例えば、受講者と教員や教材の最適なマッチングが実現できるのではないか、またデータに基づき最適な学習・進路アドバイスが受けられるのでないか、それにより安価で多様な学びが実現できるのではないか。教員目線でいうと、全ての人に講座開講機会を提供することができ、大学でテニュアなどとらなくても人気講座を開講すれば儲かる、そんな教員の新たな働き方を実現できるのではないか。というよりもすべての人が教員になれるのではないか。つまりPtoPの超個別最適化学習が実現できるのではないか。

そして、オンラインやアプリでの学び、ワークショップやイベント参加、インターンやボランティア参加などリアルな学び等、すべての学びを認証することができ、たとえばそこでトークンを発行するなどモチベーションを維持する仕組みをいれられないか。さらには学びはお金がかかる世界から学びは儲かる世界にできないか。それにより、就活などしなくとも、学習プロセス履歴と産業界との最適なマッチングができるのではないか。つまり「多面的評価、生涯学習・学習履歴社会」の実現につながるのではないか。

そして最後に、これは超大学や超教育のミッションそのものですが、教育機関の枠を超える学習環境の構築ができるのではないか。それはオープンバッジという考え方ですでにはじまっている動きではあります。その一方で学びのコミュニティというのは重要で、それもどこか既存の組織に所属するのではなく、学習者自身が興味関心や学習状況の類似から適切な学習コミュニティを形成できるようになるとよいのではないか。それにあたり学習者自身が学習データを保有できる環境が大事ではないか。結果として分散化した学習環境を実現できるのではないか。

そんなことを考えています。

実装に向けての課題は、

1.技術

  社会全体の理解と利活用の促進

  (プライバシー保護、データ書き込みの真正性、データの変更不可、標準化等)

2.教育

  制度そのものの抜本的見直し

3.コスト

  書き込みコスト(パブリック型)や継続性のある運営体制(コンソーシアム型)

かな?と思っているのですがどうなのでしょうか。

そもそもにこれを実現するにあたってのブロックチェーンが必須なのかもまだ良くわかりません。