超教育協会
- 2021.04.25
- 【開催報告】「『超教育』を実現するVRの未来と展望」
VR×教育シリーズ第4弾は、バーチャル東大を背景に大御所稲見教授の登場。稲見先生の専門領域は、身体を情報システムとして理解する「身体情報学」です。
センサーを搭載したメガネで試験問題を問く際の眼球運動を計測・分析することにより、単に正解か不正解かということだけではなく、確信をもった正解か、偶然の正解かといったように、4象限で理解度を把握できるようになり、本人に適した学習をすすめることができる。また、VRを活用することで、職人の技を「超高速学習」することができるなど人の能力を拡張することができる。そのような教育におけるVR活用の有用性を、事例を通じて一通りお話した後に、稲見先生は疑問を投げかけます。
「四角い車輪と丸い車輪を比較すると、平地では丸い車輪しか機能しないが、波上の曲線の環境下では、四角い車輪の方がスムーズに進む。その場合、どちらが能力が高いのか?」
環境が変わると人が発揮できる能力も変化していくというわけです。
農耕時代には身体的ハンディキャップがあると働きづらかったけれど、産業革命により機械化が進むと身体に不自由があっても働けるようになりました。他の例でいうと、言葉が異なる国ではコミュニケーション困難な状況に陥ります。
能力を「人と人、人と環境の相互作用の中に存在するもの」と稲見先生は定義します。
であればVRは環境調整に働きかけられないか。けん玉の動きをVRでスローモーションにすると、けん玉が苦手な人でも対応できるようになるそうです。それは単に物理法則の世界では難しかっただけであり、環境を変えればできるようになるということを意味します。つまり環境を変えてあげればいいのです。そのように本人に適した環境の下で成功体験を積み重ねることで、その人の能力を最大限引き出すことができると言います。
VRを導入することで、一人ひとりに適した環境を構築し、全ての個人が活躍できる社会を実現できるのではないかと稲見先生は言います。「顕微鏡や望遠鏡などと近い感覚でVRが教育現場に導入されて欲しい」。それいいですね。世の中の見方を変えるツールを全員が手にする1人1VR時代到来でしょうか。
そして最後に、テクノロジーによって身体能力を拡張できると同時に、能力が発揮しやすい環境を構築できるVR時代の教育に求められることは「好奇心」だと指摘します。その好奇心とは「変化する環境に対応し多様な環境を自ら創造する力」であると。そして、こう言葉を続けます。「好奇心というのは、新しい意味での繋ぐ力であり、コミュニケーション能力のDXを支えるもの。今後の情報化社会の課題は分断。異なる価値観による分断を超える力は好奇心。」。
他者視点での体験を可能とするVRの技術もまた分断を埋めてくれる技術とも言えるかもしれないですね。
ちなみに「これからの時代に必要なソーシャルスキルは、笑顔でニコニコ会話することではないよね」という稲見先生の言葉を発端に、コミュニケーション力含むソーシャルスキルの再定義を今度はお肉を食べながら議論しましょうという約束をして終えました。
というわけで次回は肉で。