プログラミング教育

2022.02.28
全国小中学生プログラミング大会最終審査会・表彰式

昨日は、今年で6回目を迎える全国小中学生プログラミング大会最終審査会・表彰式でした。

205件の応募の中から12作品が最終審査会にすすみました。以前も投稿しましたが、レベルが高い作品があまりにも多く、泣く泣く12作品に絞ったというのが実情ですので、最終審査会まで残っただけでも大いに誇れることです。

グランプリに輝いたのは笠見旭陽さん(小学校6年生)の「FSP_MonsterBattle」。

こだわりはすべて自作すること。キャラクターもステージもアイテムも。審査会で話題になったのは、数秒の爆発シーンの演出。細部にまでこだわり作品をつくりあげているところに笠見さんのクリエイター魂を感じました。

最新テクノロジーを使いこなし、すぐにでも世に出せるレベルまで完成度をあげてきた点が高く評価されました。

ゲームの作り手になったことで、ふだん遊んでいたゲームの見方が変わったとのこと。そんな体験を小学生のうちにできるなんてスゴイことです。

準グランプリは、高橋桃子さん(小学校3年生)の「写真に入れる世界」。

コロナでどこにも行けない。でも写真が手元にある。ここに行きたい!

こうしてこの作品が生まれました。

「写真に入れる世界」。可愛らしい声が耳に残ります。

空想の世界は、鬱々とした気持ちを晴らしてくれます。そんな桃子さんの頭の中にある素敵な世界を共有してくれました。ちなみに、行ってみたいところの設定は、「山、富士山、友だちの家、海の中の宮殿とドカン」にしたそうです。

「写真に入れる世界」というこれまでにない新しい世界観を築いたことが高く評価されました。

優秀賞・中学校部門は、野崎陽斗さん(中学2年生)の「RUBIC CUBE MASTER」。

ルービックキューブを最短手順に近い手で解くことができるプログラム。2時間かかっていた処理を1秒でできるアルゴリズムを生み出したとのこと。「今まで誰もやったことがないこと」に挑戦したくなって取り組んだそうです。ビジュアルもいいんですよね。ルービックキューブの色が揃っていく様子を眺めているだけで、爽快な気分になります。

ぜひ世の中のまだ解明できていない問題のアルゴリズムを生み出しまくってください!

優秀賞小学高学年部門は、小長井聡介さん(小学4年生)の「現実シリーズ 5.xx 駅乗降客シミュレーター」です。現実シリーズ、きました。小長井さんは、2年前に渋谷スクランブル交差点のシミュレーターを開発し、見事グランプリに輝いているんです。そんな彼が、さらに2年間、「人の流れ」を観察し続けていたことに、私は興奮を覚えました。

小長井さんは言います。「人の流れは美しい。」

今回の作品は、世界一利用客が多い新宿駅の人の乗降の流れを精密に再現したシミュレーター。人の流れと実現が好きな彼の現実シリーズ最新作。

「人の流れをシミュレーションすることで、安全や防災、建物や駅の設計、人の流れのルール、感染症対策など、さまざまなことに生かせる」と語ります。一方で、他者のためにつくるモチベーションについて問われると、質問の意図が分からないといった様子で、「ずっとつくりたいと思ってつくった作品。ぼくが欲しいものをつくった」と回答。

好きなことだからこそ、深く追求し、長く探求し続けることができる。でもその創りたいものを追い続けた結果として、それは多くの人を助ける、人の役たつものになっている。理想的でないですか!

プレゼンの最後に、ノーベル賞を受賞したシミュレーション研究について言及していました。ぜひ将来ノーベル賞をとってください。それを期待できるだけの探求力・実装力があります!

優秀賞小学低学年部門は三澤康太郎さん(小学1年生)の「Cyber City YOKOHAMA」。

コロナにより授業が減少し、横浜のイベントも中止になった。両方の問題を解消できないか?と考えてつくった作品がこちら。1年生の算数の問題を解きながらサイバー世界の横浜を旅することができます。カメラ機能を活用して、まるで横浜にいるような気分も味わうことができる。横浜PRも兼ねた学習教材を小学校1年生が全国の1年生のためにつくった。「なぜ人のためにつくるのか?」という質問に「作ったものを多くの人に使ってもらいたいから。そのためには楽しんでもらうものを作らないと」。小学校1年生です。ちなみに、お父さんお母さんに遊んでもらった感想に基づいて改良したらバグが増えちゃったそうです・・・可哀想に。。。

1年生とは思えない実装力とプレゼン力に、何歳からプログラミングをやっているの?という質問が飛びます。「4歳から」だそうです・・・。なお、他の人のソースコードをみながら学んだそうです・・・。恐るべき小学1年生。

特別賞は、山本匡一郎さん(小学5年生)による「コロナをめぐるぼうけん」。

「コロナウイルスが変異して人や生き物を乗っ取れるようになった世界。主人公のお父さんがコロナウイルスにかかってしまい、お母さん(お医者さん)にコロナの特効薬の材料を届けるストーリー」のRPGゲームです。コロナウイルス感染について、誰でも簡単に遊びながら学べるゲームを作りたかったとのこと。

ちょまどさんが審査講評で「自分が楽しんでつくっているというのが伝わってきた。独特の世界にワクワクした。」とおっしゃっていましたが、まさに制作者のワクワクが伝搬する作品でした。

ストーリーはもちろんのこと、ドット絵も音楽もすべて自作とのことですが、一番楽しかったポイントは「自分がつくったキャラクターに動きをつけたり、音楽をつけたりするところ」だったそうで、プログラミングに費やしたのは制作時間全体の半分くらいとのこと。プログラミングは自分が思い描く世界観をカタチにする手段ですね!

奨励賞の6作品も、どの作品がグランプリであったとしてもおかしくないというレベルのものでした。

加藤諄之さん(小学3年生)の「君が10年後の世界を作る ~地球温暖化のない街づくり~」は、地球温暖化のことを小学生が考えるきっかけを提供するゲーム。シムシティのような町があり、まちづくりメニューである「はつでん」「のうぎょう・ちくさん」「いえ・ビル」「き・こうえん」「どうろ・くるま」などをいじることで、CO2、メタン、電気などの数値が変わります。温室効果ガスの原因を無くし、ソーラーや風力発電、水素車などを使って、住民の気持ちを考えながらまちづくりをすることができます。「幸せ」という評価項目がある点がユニークですね。環境問題と一人ひとりの幸せのバランスが大切だと考えたとのこと。ゲームのステージは、多くの人に環境問題を知ってもらうだけではなく、「対策」まで考えてもらうために、ステージを2つに分けたそうです。アクションを促す仕組みまで考えているというのは末恐ろしい。

佐藤翔太(小学4年生)による「うさぎとかめ」。

PCに先生の代わりをしてもらうことで先生の負担を減らすComputer is a teacher Project(CIAT Project)。具体的には自動で縄跳びを跳んだ時間や回数を測定するとともに、ML2Scratch を活用してフォーム改善のアドバイスをしてくれるアプリケーションを開発しました。

AIに正しい姿勢を学習させるのが難しかったとのこと。学習方法を変える度にAIにゼロから学習をさせないとならず、トータルで1000回は縄跳びを飛び、縄跳びが上手になったそうです。

今後はサッカーや習字などでもCIATプロジェクトを推進したいそうで、ぜひGIGAスクール構想と連携してください。

口田道哉さん(小学5年生)による「COVIDシミュレーター」。

テレビや新聞、学校などで情報を集め、コロナウイルスの感染状況をシュミレーションするプログラムを開発。緊急事態宣言が発令されると自粛、免疫取得者は一定時間経過すると免疫がなくなるなども再現。

開発動機は、感染を防ぐために自分ができることがあるのではないか、その知見を広め、お互いに思いやるようになったらコロナは防げるのではないかと考えたそのうです。

大人が実行しているコロナ対策についてどう思うか聞いてみたら「オミクロン株に対して、いまの対策は通じないのではないかな。」とのこと。ぜひ、科学的根拠に基づいた提案を大人にどんどんぶつけてください!

中島莉衣奈さん(小学4年生)による「ぼうさいサーチ」。

「手軽で 分かりやすい 防災体験」をコンセプトにつくられた防災マップ。ARカメラを活用して、街の中で体験しながら防災体験ができるアプリです。

アイコンやイラストも自作とのことですが、そのまま活用できるレベルで驚きました。

ユーザーテストとブラッシュアップを繰り返し行う根気強さにも感銘を受けました。

構想力、デザイン力、技術力、プレゼン力。全てにおいて完成度が高い作品でした。

チーム配り係さん(小4〜小6の4人チーム)による「ロボットの学校 秋葉」。

和歌山県「きのくにICTプログラミングコンテスト」から勝ち上がってきたチームです。そして、今回唯一のハードウェア作品。

未来の教室ではロボットが配り係さんの仕事を手伝ってくれるかも?!そんな姿をカタチにしてくれました。ロボット先生が採点してくれる?ロボット先生が答案用紙を配布してくれる?

私もロボットと生活していますが、ロボットと一緒の学校生活が実現する日も近いのかもしれません。

チームで役割分担をして取り組み、チームメンバーの結束が強まったそうです。

谷悠汰さん(中学3年生)による「 Reflection」。

光をミラーやワープ、通過点などの様々なギミックを操作して、電球に届けるパズルゲーム。

すでに様々なゲームが世の中にある中で、このような新しいゲームのアイデアを生み出すこと自体がすごいです。ゲームをつくるネタを探すという視点を持って日常を過ごすと「光」1つとってみても、見え方が変わるのでしょうか。

この作品は谷さんにとって3つ目のゲーム作品。次はアクションゲームにチャレンジしたいそうです。

総評で実行委員の遠藤さんが「このプログラミング大会は、表現としてのプログラミングをうたっている」と説明されました。それは今回の審査結果にも表れています。

制作者自身が心底楽しみながらワクワクしながら表現した作品が、高く評価されていたと感じます。

「答える力がすごい。ものをつくることで言語化できるようになっている。」という指摘も、「つくりながらまなぶ」意義につながります。

川田十夢審査員長の総評でも「質問をはぐらかさない姿勢が良かった。プログラミングはごまかしがあると動かない。それを思想としても持っているというのがすごい。」とありました。プログラミングを通じて育まれる力は多岐に渡りますね。

審査員長の「レベルが高くびっくりした。子どもとして扱うのをやめた。」は最高の褒め言葉!

稲見実行委員長の締めの言葉は大きく頷くことばかり。

「ハックとクックは似ている。プログラミングと料理は近い。

同じ材料をつかっても、誰がつくるかによって違う味になる。国や地域や家庭によって違う。自分で食べてみたい、喜んで食べてもらいたい。その気持があると、ありふれたおにぎりも美味しい。

あたたかい気持ちがはいった、オリジナルな作品がそろった。未来は明るい。

未来をプログラムするのはみなさん。」

そう!未来を想像し創造するのはみなさん!そしてその未来は明るい!

今年もまた強い好奇心と高い志、そして想いをカタチにする実装力・実行力を持ったみなさんに大いに刺激を受けました!参加してくれて、チャレンジしてくれて、ありがとうございました。

審査員のみなさん、実行委員のみなさん、おつかれさまでした&ありがとうございました。

本大会をサポートしてくださっている皆様に、心より感謝申し上げます。

来年もたくさんの希望に満ち溢れた子どもたちと出会えることを楽しみにしています(*^^*)