プログラミング教育
- 2022.03.23
- STREAMチャレンジ2022全国大会
ロボットと共生する社会に向けて社会課題をPepper&クリエイティブな発想で解決するプログラミングコンテスト「STREAMチャレンジ」全国大会。今年もコメンテーターとして参加してきました。MCはマヂカルラブリーさん。今年のお題は「超SDGs」。ロボカップジャパンオープンとの共同開催です。
STREAMチャレンジの特徴はリアルな社会との接点があること。アイデアに対して第一線で活躍する有識者からフィードバックを頂くことで、子どもたちは社会実装を意識することができます。
今年最優秀賞に輝いたのはエコンキスタドールによる「フードロス削減計画」。
給食の食べ残しをなくすことでフードロスを解決し「飢餓をゼロに」に貢献したい。
どうやって?彼女たちは、食べ残しの原因として「食事時間が短いこと」、「フードロスの知識や現状を知らないこと」に着目しました。そこで取り組んだのが、配膳時間短縮とフードロスに対する啓蒙による行動変容の働きかけです。
結果は、配膳にかかる時間を75〜80%に削減。97%の生徒の意識改善。そして、大幅に食べ残しが減りました。
感動したのは、細部にまで拘り丁寧にプログラムを作り上げていたことです。例えば、伝わりやすさを考え、Pepperの話すスピード・声の高さやジェスチャーも試行錯誤しながら調整をしています。細部に霊が宿る。その意識が全てに徹底されていました。
改善プロセスの説明において、「プログラム創作者側の視点でつくってしまった反省」を語っていたのが印象的でした。ユーザー目線で設計されたPepperです。
原因をしっかりと把握、そして効果を定量的にはかり、分析し、改善する。
スーパー中学生たちの将来の夢は、音楽家、翻訳家、薬剤師。×デジタルでどんな世界を築いてくれるか楽しみです。
優秀賞1作品目は、掛川北中学校Pepper部による「医療現場の負担を軽減するペッパー」。患者の排泄状態を管理し、医療現場の負担を軽減してくれるPepperの名前は「Toilet Pepper」。このまま商品名にしてもいいのではないかしら?
コロナウイルス感染症の影響で逼迫する医療現場の負担を軽減し人手不足を解消することで、全ての人に健康と福祉をもたらしたい!医療分野における技術革新により、高齢化しても住み続けられる街づくりに寄与したい!というのが目的。
医療従事者が専門的な業務に専念できるよう排泄状態の記録作業を自動化するプログラムを実装し、中東遠総合医療センターに一週間設置。実証試験を行いました。
これまで排泄状態を伝えることは患者さんにとっても心理的負担が大きかった。しかし、機械相手なので話しやすくなり、それが看護師の仕事効率化にもつながったそうです。患者の気持ちに寄り添いつつ医療従事者を救うPepper。
「現場の雰囲気を良くしている」「心の癒やし」という声もあったそうで、それが人型ロボットを活用する良さですね!
新商品発売をイメージした演出など、プレゼンにも工夫が見られました。
医療、行政、教育というのはデジタル化がなかなか進まなかった3領域。そしてコロナにより苦しんだ3つの領域とも言えます。そのうちの1つである医療の現場において、医療従事者及び患者の両方から評価されるものを生み出したことは素晴らしいですね。医療センターにて実証実験をしていますが、現場の声に丁寧に耳を傾けなければ出てこない視点が組み込まれており、課題解決に真摯に取り組む姿勢が見られました。
優秀賞2作品目は青北募金サポーターズによる「ペッパーで募金サポート」。
静岡県熱海市伊豆山地区で起きた大規模な土石流のニュースがきっかけで学校の募金活動を活発化したいと考えたそう。
Pepperを活用することで、単に募金を求めるだけではなく、課題に関する詳細も伝えることができます。社会問題に興味を持ち、募金をする人が増加することで、「助け合いの心」が生まれる。それこそが持続可能な社会の実現への第一歩というのが良い発想ですね。そんな優しい気持ちが前提にあるからこそ生まれたであろう募金をするとPepperが感謝を伝えるというところにグッと来ました。ロボットが募金活動をするという斬新さで人を集めつつも、ロボットの対応はあたたかい。そこに惹かれます。コロナで人の代わりにロボットが活躍する場が増えていますが、全国の募金活動もPepperがやってくれると良いですね。なお、5560円の募金が集まったそうです。
特別賞1つ目は、チームKOMAによる「食品ロスをなくそうペッパー」です。
給食の「食べ残し」を減らすことで、日本の「食品ロス」の問題に貢献し、自分たちが持続可能な社会・世界の担い手であることを自覚することを目的とした取り組みです。
完食のメニューを記録しポイント化する「もぐもぐポイント」など、「食べ残し」を減らす意欲を高める工夫が随所に見られました。プログラムを作る際に、先生や保護者など幅広い関係者の意見も取り入れ改善を何度も行っていた点が素晴らしい。
プレゼンもそうですが、社会課題を伝えるための情報整理が非常に優れていました。プログラムを作る際に、先生や保護者など幅広い関係者の意見を取り入れ試行錯誤を繰り返す丁寧に取り組む姿勢にも感銘を受けます。紙芝居の活用など、デジタルとアナログを融合させて伝えているあたりもあたたかみがあって好感度の高い取り組みです。
特別賞2つ目は、藤枝市立葉梨中学校の「防災意識を高めるために、中学生の視点から情報を発信していこう」です。
「気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さを身につける活動」として、地震や大雨などの自然災害に対して学区に生活する人々のレジリエンスを高め、万が一の時に自分や大切な人の命を守ることができることを目指して取り組んだそうです。
危険箇所や防災対策について多くの人々が深く理解し、安心安全に行動できるよう、中学生の視点から防災情報を発信。そのために、地区の避難場所や通学路の危険箇所の確認、自宅の防災対策、藤枝市の自然災害対策などを細かく調査。藤枝市役所、地域交流センターの方からヒアリング。そして、地区交流センターにPepperを設置し、試用した結果をもとにプログラムを改良することで、実用化を目指しました。その結果、危機管理センターから「Pepperを藤枝市防災PR大使に」と要請を受けたそう。「大きな渦を起こすことができた」という表現の通り、広く多くの市民に考えるきっかけを提供したのではないかと思います。Pepperが防災PR大使に任命されるというのは日本初では?
「技術科の授業」における取組だったそうですが、授業後、自主的に探究し続けたのが素晴らしい。
事前調査やヒアリング、設置した上での改善点の洗い出しなど、根気が必要とされる作業だったのではないかと想像します。それをやり遂げたということが称賛に値します。
特別賞3つ目は、MPC-Miwa Pepper Clubによる「コンビニ店員ペッパー」。
コンビニの従業員不足課題への対応をするプログラム。Pepperが接客をすることで課題を解決します。効率的に顧客対応するレジ機能、天気・好みに合わせた商品おすすめ機能、観光地を紹介する地域特化型機能、商品情報を一括管理する在庫管理機能、自動郵便受取機能。とにかく機能が多彩。セブンイレブンの協力を得て、実際の商品情報を活用した実用的プログラムを組むなど、現場のニーズに沿った提案となっているのが良いですね。
中学生チャレンジ賞は笠田中学校情報部M&Aによる「コロナ禍でも安心して学習できるペッパー」。
コロナ禍での先生の負担軽減および授業の質の確保のためにPepperを活用する提案です。Pepperが生徒の体調の情報を収集し、一括管理&先生に報告してくれます。便利!さらには、計算しりとりや足し算バトルなど楽しく勉強も教えてくれる。近隣の小学校で実証したところ高評価だったそうです。
ICTを活用することで、先生方の負担を軽減するとともに、授業の質を向上させるなんて、いま国が推進するGIGAスクール構想にぴったりです。ぜひ全国の学校に導入してください。
小学生チャレンジ賞は岡部小園芸委員会による「園芸委員会の仕事を手伝うペッパー」。
岡部小学校の課題は、花への水やりを忘れられてしまうこと。そこで、その日の担当を教えてくれるPepperを開発しました。さらには、気象庁から天気の情報を取得し、降水量によって水をあげる必要があるかどうかを判断してくれます。今後は湿度をはかることができるセンサーで、より高い精度で現地の状況を計測し、水あげの判断の正確性をあげることを目標としているとのこと。
データを活用し、効率的かつ適切に花のみずやりをする。すごいです。データ活用を意識して学校の係をこなすこどもたちの将来が楽しみです。
私たちも「超SDGsラボ」という、SDGsについて研究・活動するコミュニティを設立しました。B Lab×京都大学・京都超SDGsコンソーシアムの連携プロジェクトです。
SDGsを社会実装しようとする個人及び組織のアクションを社会全体として支援していく環境を整備していくことを目指しています。特に若年層のSDGsに関するアクションの活性化を応援したいと考えています。
まさにSTREAMチャレンジでの子どもたちの取り組みを応援するような取り組み。
子どもたちが社会の中で、当事者意識を持って課題を発見し、そしてそれを解決する具体的なアイデアを考え、実装していく。そんな動きが全国に広がることを期待しています。