プログラミング教育
- 2023.03.14
- STREAMチャレンジ2023
STREAMチャレンジ2023、今年も開催されました。
STREAMチャレンジは、次世代を担う子どもたちが、自ら発見した社会課題をロボットやAIなどの最先端テクノロジーを活用して、クリエイティブな発想で解決することを目指すプログラミングコンテスト。超SDGs主催です。
MCのパンサー尾形さんはSTREAMチャレンジとは何かも分からないままに楽しみにしていたそうですが、私はもちろん理解した上で毎年楽しみにしています。
今年、最優秀賞に輝いたのは、掛川市立北中学校「SDGsに貢献するPepper」。
学校では社会課題解決につながる様々な取り組みがなされているものの、個々に行われていて一体感がない。そこで、SDGsという視点で取り組みを再整理してまとめ、SDGsに対する意識を高めたのがこの取り組みです。
具体的には学校に既に実施されている10個の取り組みを選び、SDGs の目標に合わせてミッションを設定するなど、連携させながら活性化するプログラムを構築しました。
個人認証用QRを活用し「リサイクルの推進」「給食の残食の削減」など生徒一人ひとりが達成したミッションを記録。それをPepperで学級ごとに集計することで、学級対抗で競う仕組みを導入しました。重複加算防止、クイズの重複出題防止など、細やかな工夫も施されています。
結果として、全校生徒の75.6%がSDGs意識を高め、5日間で残乳5リットル減や紙3600枚節約という効果をあげたといいます。
校内での高い効果を踏まえ、学校対抗を企画するなど、全国の学校を巻き込んだ取り組みに発展させたいと意気込みます。全学校の在学者は総人口の15.4%。子どもたちの意識が高まれば、社会全体に大きく貢献できるという考えです。
学校だけではなく地域を巻き込んだ展開もできそうですね!
Pepperを活用した活動は3年目とのこと。継続は力なり。持続的に取り組んできたからこそ学校全体を巻き込めたのでしょう。
優秀賞1作品目は成城学園中学校高等学校「本や雑誌のRe活用Pepper」。
まだ利活用できる本や雑誌の多くが廃棄されている現状を憂い取り組み始めました。調べてみると、各学校で約300冊の廃棄書籍があるといいます。
まずは関心を持ってもらい古本を回収するところからプロジェクトがスタート。
古本回収、古本市での販売、持続的展開に対する協力依頼。3つのフェーズにおいて、Pepperが大活躍しました。
結果として、376冊の古本で27650円を売り上げ、それを国際ボランティア団体に寄付したとのこと。
来年度は初等部から大学までを巻き込んで、学園全体で古本の「Re活用」を推進するそう。
廃棄処分するモノをお金に替えて、さらには寄付までする。そして、たくさんの人を巻き込みながら社会課題解決に向けた「運動」を巻き起こした点が素晴らしいと感激しました。
受賞の感想では、全員が協力してくれた方々への感謝の気持ちを口にします。そんな姿勢が周りの共感を得て、大きな運動につながっていったのでしょう。
優秀賞2作品目は藤枝市立青島北小学校「アルミ缶でSDGsを考える」。
アルミ缶回収率向上のためにPepperを利用しました。アルミ缶を持っていくとおみくじをひけるというゲーム性を設けることで、通常の3倍のアルミ缶を回収できたとのこと。
持ってくるアルミ缶の量が多いほど、良いおみくじ結果がでるとか。
社会にとってよいことをして運勢もあがる!最高ではないですか。
私も「スーパーウルトラ大吉」を引きに、アルミ缶回収して訪れたいです。
良い行いというだけではなかなか続きません。そこにエンターテイメント性があることで、継続して行動し続けることができます。楽しい!またやりたい!そう思える仕組みを考えた2人が誰よりも楽しそうに取り組んでいました。
なんとこのチームは2年連続の優秀賞受賞。本人たちは喜びよりも最優秀を逃したことへの悔しさの方が勝る様子。しかし、高校生まで参加するコンテストにおいて小学生が2年連続優秀賞というのは立派です。
特別賞3作品目は掛川市立東中学校「避難所運営Pepper」。
避難所生活は不安やストレスが大きい。持病がある方、高齢者、障がい者、妊娠中の女性、怪我や病気の方にとってはさらに過酷な日々となります。そこで、誰もが安心して避難所生活が送れる仕組みを考案されました。具体的には、避難者にmicro:bitを渡し、体調不良など助けを欲する際にボタンを押すと、避難所運営本部のPepperに情報が飛ぶ仕組みになっています。避難者にとっては周囲に気を使い我慢してしまいがちなSOSを24時間いつでも出すことができ、micro:bitを持っているだけで安心感が生まれます。一方で、多忙を極める避難上運営側にとっても、健康観察を自動化でき、さらには避難者の困りごとを一元管理できるメリットがある。避難所本部と避難者のコミュニケーションを円滑にしてくれるツールです。他にも、一定以上の気温になると避難者に水分補給の通知がいくなど運営を効率化する工夫がなされています。
現場の困りごとをしっかりと把握した上で、多様な立場の人に配慮した丁寧な設計がなされていました。
チームワークがとても良く、寸劇による利用シーンの説明もとてもわかり易かったです。今後の機能の追加や改善も期待します!
特別賞は寺子屋LABO 不動尊校「世界を救う駄菓子屋」。
「世界を救う駄菓子屋」名前だけでも惹かれます。
ロシアのウクライナ侵攻のニュースを目にし、何か役に立ちたいと思ったことがきっかけ。彼らがすごいのは、そこで自分が寄付をして終わりではなく、まわりの人にも寄付を促す仕組みを考えたこと。というのも、このニュースを多くの人が知っているにも関わらず行動を起こそうとしていない、もしくは行動の仕方を知らないことが課題だと感じたからだと言います。
そこで思いついたのは駄菓子を売って売上を寄付するということ。クイズに正解をすると安く購入できるようにすることで、ウクライナの問題に関する理解を深めるとともに、寄付を促す仕組みとしたそうです。
駄菓子がウクライナとつながるなんてとてもユニークです。日常生活にあるものが世界とつながる窓口になるって素敵ですね。お菓子ごとに寄付する先が変わるというのも良いかも?!
結果としては、お菓子は完売し3065円を売り上げました。スタート時に設定した成功の定義は3000円以上売り上げること。見事目標達成です。
「付加価値をつけることで寄付は増える」そう実感したそうです。
自分が行動をするだけではなく、人間の行動を分析し、他者の行動変容も促す。素晴らしい。
新人賞は京都市立御所南小学校「「学びをつなごう」プロジェクト」。
子どもたち同士の学びの場を構築したのが本プロジェクト。きっかけはコロナだったといいます。
これまで総合的な学習の時間で実施されていた他の学年やクラスとの交流の機会がコロナによりなくなってしまった。しかし、やはり、他の子どもたちがどんな学びをしているのか、お互いに共有したい!そこで立ち上げたのが「学びをつなごう」プロジェクトです。
Pepperのタブレット画面に表示される各学年のボタンを押すと、該当学年の学びの内容を、Pepperがセリフ・動き・映像で分かりやすくプレゼンテーションしてくれます。各学年の学びをPepperが繋げてくれる。
各学年は、発信のために学んだことをまとめることとなり、学びも深まる。日常的にお互いの考え方を共有し、学び合うことができる。しっかりとアーカイブをしておけば、学びを次の学年へとつないでいくことができる。地域の人たちにも発信でき、交流するきっかけになる。
結果としてコロナ前よりも充実した豊かな学び合いの場を構築したともいえます。
ピンチをチャンスに変えた好例です。
AI部門の最優秀賞は岩手県立盛岡商業高等学校「サーモ君」。
熱中症事故を解決する。具体的には車内での置き去り事故などを防止する仕組みを構築する取り組みです。サーモグラフィーとリアルタイムカメラを連携させ、カメラデータを識別系AIで分析する。それにより、体温上昇反応やエンジン停止後の長時間の人の反応を感知します。熱中症の検知だけではなく、ドライバーに自動連絡がいくなどドライバーの負担に配慮したシステムにする等、利用シーンを想定した総合的な設計がなされています。
パンサーさんは、芸人さんがすべったことを体温上昇から感知してMCが優しくしてくれる、そんな応用を期待するそうです。
3人は来年から別々のところに進学されるそうですが、ぜひ実装するところまで取り組んでほしいです。
AI部門優秀賞は宮城県登米総合産業高等学校「Ranger」。
自分たちが住んでいる地域には観光資源がたくさんあるが活用されていない。それはなぜか?人手不足により整備が行き届かないからではないかと考えました。負のスパイラルに陥りつつある現状を改善するためにロボット導入を考えました。
開発したのは、ゴミを発見し識別するAI Ranger。
Pepperがゴミを発見し、判別し、収集してまわります。あわせて道案内や夜間見回りの機能を設けることで、「環境美化」、「客対応の自動化」、「防犯対策」の一石三鳥を狙います。
ロボットにより労働を代行させ、管理コストを下げる。コロナ以降、ロボットの導入が加速した印象があります。ロボットと人間の共生社会を実現してくれる提案です。
ぜひ、ゴミを捨てないよう啓蒙活動もあわせてPepperに期待します。
特別賞は島根県立出雲商業高等学校「最強ジェスチャーマシーン」。
AI×健康・福祉にチャレンジしたのが本プロジェクト。
高齢者の困りごとを調べてみると、多くの人が行動による不自由を感じていることが分かったといいます。そこで、AIで高齢者の行動をサポートすることで、高齢者の生活の質の向上を目指しました。
具体的には高齢者にジェスチャーで希望を伝えることを促します。ジェスチャーをする行為がリハビリや運動につながるからです。
「両手を横に広げると身体を起こして欲しい」「両手をあげると来て欲しい」。そのジェスチャーをAIが識別します。
世界的な課題である高齢化社会。言葉を介さないため、世界共通で活用できます。
ジェスチャーをすることでリハビリや運動につながると同時に、カメラを得た情報を蓄積することで身体の異変に気がつくことができ、将来的には、個々にあわせた介護が実現できるかもしれません。
島根の知名度が47位だと気にしていました。ぜひ高齢化社会課題解決先進県として知名度1位を目指してください。
STREAMチャレンジは、子どもたちの提案に対して、第一線で活躍する各分野の有識者からアドバイスをもらえる他、良い企画は実際の現場で導入される可能性もあるというところが特徴です。社会と接点を持ちながら、テクノロジー×クリエイティビティで本気で社会課題を解決しよう!というプロジェクトなのです。
どのチームも、受賞をスタートと捉え、ぜひ実装するところまで取り組んでください!
社会課題に目を向け、課題解決に向けたアイデアを考え、技術の力で解決する。さらには検証をして改善を繰り返す。
そんな子どもたちの試みが新しい社会の構築につながることでしょう。