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- 2024.08.02
- 触力検査プロジェクト始動
ニューロダイバーシティプロジェクトの一環として、触力検査プロジェクトを始動します。本プロジェクトでは、触覚の感度を測定し、個々の触覚特性を理解することを目的としています。
視力検査が視覚の状態を評価するのと同様に、触力検査は触覚の状態を評価するための手段です。検査結果は、触覚過敏や触覚鈍麻の可能性を判断します。触覚の特性を早期に発見し、個々のニーズに合わせた適切な対策を講じることで、教育現場や職場での効果的なサポートが可能となり、日常生活の質を向上させることができます。
触覚の専門家であるKMD南澤教授&名古屋工業大学田中教授との共同プロジェクトです。
さて、触力検査プロジェクトでは触力検査表を作成すべく、参加者を募集します。感覚に関する困りごとを抱える方にぜひご参加頂けると嬉しいです。
https://business.form-mailer.jp/fms/83ca05be251532
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000126992.html
以下、もう少し詳細。
【はじめに】
触覚は、進化の早い段階で生物が獲得した五感の中でも原始的な感覚であり、私たちの生活において極めて重要な役割を果たしています。熱さ、冷たさ、痛みなどの感覚を通じて危険を察知したり、物を掴む際に力加減を調整したりすることができるのは、触覚があるからこそです。また、握手や抱擁を通じて感情を伝え合うコミュニケーションも触覚が支えています。アリストテレスは、人間の知性の高さは触覚の鋭敏さに起因すると述べたとも言われています。幼児期に触覚が欠如すると、知覚や認知の発達が遅れ、感情体験の欠如により自己コントロールの障害が生じる可能性が指摘されています。このことからも、触覚の重要性が明らかです。近年、触覚に関する科学的理解が進み、個体差も明らかになりつつあります。触覚の個人差を理解することで、感覚特性に基づいた教育や医療の提供が可能となり、さらに道具、衣服、空間などの人工物や環境も触覚特性に合わせて開発することができます。これにより、個別に最適化されたより快適な生活を構築することができます。触力検査は、触覚の個人差を理解し、適切なアプローチを取ることで、一人ひとりの生活の質の向上を目指して開発されたものです。
【触力検査とは】
触力検査とは、触覚の感度を測定するための検査です。この検査では、触覚の鋭敏さを測定し、個々の触覚特性を理解することを目的としています。視力検査が視覚の状態を評価するのと同様に、触力検査は触覚の状態を評価するための手段です。
検査結果は、触覚過敏や触覚鈍麻の可能性を判断します。触覚の特性を早期に発見し、個々のニーズに合わせた適切な対策を講じることで、教育現場や職場での効果的なサポートが可能となり、日常生活の質を向上させることができます。
参考)以下のように定義する。
触覚:皮膚にある感覚受容器を通じて、外部からの刺激を感じとる感覚。
触力:触覚を脳が処理する能力。触覚の感度。
【触覚に関する困りごと】
触覚に関する困りごとには、触覚過敏と触覚鈍麻の両方があり、それぞれが異なる形で日常生活に影響を与えることがあります。以下は、困りごとの例です。
■触覚過敏の場合
1.衣服の不快感
衣服の素材やタグ、縫い目が皮膚に触れると強い不快感を覚えることがあります。特定の服を着ることができず、常に柔らかい素材の服を選ばなければならない場合もあります。
2・人との触れ合いの回避
握手や抱擁などの通常の社会的な触れ合いが苦痛になることがあります。このため、人との接触を避けるようになり、社会的な交流が制限されることがあります。
3.日用品や生活環境の選択の制限
特定の素材や質感の家具、寝具、タオルなどが不快に感じるため、生活用品の選択が制限されることがあります。これにより、日常生活が複雑化し、ストレスが増加します。
4.食事の問題
食材の質感や温度が過度に敏感に感じられるため、食事が難しくなることがあります。これにより、食べられる食材が限られ、栄養バランスが偏ることがあります。
5.過度なストレスと疲労
日常的に触覚刺激を避けるための努力が続くと、精神的なストレスや疲労が蓄積します。触覚過敏が強い環境に長時間いると、過剰な疲労感を感じることがあります。
6.集中力の低下
触覚の刺激が常に気になるため、集中力が低下することがあります。これにより、学業や仕事のパフォーマンスに影響を与えることがあります。
7.睡眠障害
寝具の感触が不快に感じられるため、寝付きが悪くなったり、頻繁に目が覚めたりすることがあります。これにより、十分な睡眠が取れず、日中の活動に影響を与えます。
8.感情的な影響
触覚過敏による持続的な不快感やストレスは、感情的な不安やイライラ、時には抑うつ状態を引き起こすことがあります。これにより、全体的な生活の質が低下することがあります。
■触覚鈍麻の場合
1.安全性の低下
触覚が鈍くなることで、熱さや冷たさ、鋭い物や硬い物による痛みを感じにくくなります。このため、火傷や切り傷などの怪我を負いやすくなり、危険な状況に気づきにくくなることがあります。
2.物の操作の困難
触覚が低下すると、物を掴む際の力加減を調整するのが難しくなります。これにより、物を落としたり壊したりすることが増え、細かな作業が困難になります。
3.自分の体の状態の認識が難しくなる
触覚が鈍いと、自分の体の位置や動きを正確に感じ取ることが難しくなります。これにより、バランスを崩しやすくなったり、運動能力が低下したりすることがあります。
4.日常生活での不便
触覚が鈍いと、ボタンを押したり、紐を結んだりするなどの日常的な作業が困難になることがあります。また、食事中に食べ物の質感を感じにくくなるため、食事の楽しさが減少することもあります。
5.コミュニケーションの制約
触覚は人との触れ合いや接触を通じたコミュニケーションにも重要です。握手や抱擁などの触れ合いを通じた感情の伝達に困難があると、コミュニケーションに影響がある可能性があります。
6.体温調節の困難
触覚鈍麻により、温度の変化を感じにくくなると、適切な服装の選択や温度調節が難しくなります。これにより、寒さや暑さに適応しにくくなり、体調を崩すことがあります。
7.医療や健康管理の課題
触覚鈍麻があると、痛みや不快感に気づきにくくなるため、健康上の問題を早期に発見するのが難しくなります。これにより、病気や怪我の治療が遅れるリスクが高まります。
触覚に関するこれらの困りごとは、個人の生活の質に大きな影響を与える可能性があり、感覚特性に合わせた環境の整備や、専門家のサポートを受けるなど、適切な支援や対策を講じることが重要です。
【触力の種類】
触覚(皮膚感覚)は、主に、圧力、振動、温度などの刺激によって生じる感覚で構成されます。本検査では、主に質感の認識を可能とする振動覚に関わる触力を計測します。振動覚により、衝突の検知、物の質感の判別が可能となり、物の掴みや操作にも関与します。
【触力の変化】
触力は、年齢や健康状態といった身体要因、ストレスや精神疾患などメンタル要因、温度や湿度や気圧などの環境要因によっても変化します。
また、年齢や慢性的疾患のような恒常的な変化もあれば、ストレスや疲労などの一時的な変化もあります。
今回は、
医療的な介入が必要、リハビリ的な介入が必要、生活における合理的配慮が必要、生活に支障なしといった判断ができるレベルの検査の作成をまずは目指します。