デジタルえほん

2024.08.20
デジタルえほんアワード審査会

デジタルえほんアワード審査会!

審査員は、いしかわこうじさん(絵本作家)、角川武蔵野ミュージアム、上條圭太郎さん(Whatever)、川田十夢さん(AR三兄弟)、きむらゆういちさん(絵本作家)、木村祐一さん(お笑い芸人)、季里さん(女子美術大学教授)、榊原洋一さん(医学博士・お茶の水女子大学名誉教授)、矢部太郎さん(お笑い芸人・漫画家)、そして国際デジタルえほんフェア実行委員長をつとめる私です。
今回は、お笑い芸人の木村祐一さんがどうしても予定が合わず、事前審査となりましたが、例年通り、作品を1つ1つ丁寧に全て体験して採点してくださりました。
デジタルえほんという領域を構築したく、2012年から始めた本アワードも、気がつけば10回目(途中開催できない年がありました)。

第1回は、有名な絵本をデジタルにした作品がグランプリを受賞。紙のデジタル化からスタートしました。

第2回は、文章・絵・プログラム全てを一人で制作した中学生の作品が受賞。デジタルえほんはすべての人がつくり手になれると感じました。

第3回は、海外からの作品応募が多数あり、デジタルえほんは国境を超えると実感しました。

第4回は、ダンボールとスマホを組み合わせた作品が受賞。デジタルえほんがタブレット・スマホから飛び出し様々な領域と融合し始めました。

第5回は、AIやARなど一步次のステージに進んだ先端技術を駆使した新時代を予感させる作品が多数寄せられました。テクノロジーの活用の斬新さが目を引きましたが、それら技術はこの表現領域においては当たり前に存在する前提の上でどういうコンテンツを生み出したかという「表現力」に焦点を当てて審査しようという議論がなされました。また活用される場も家庭から教育現場に広がりました。

第6回目は、全身を使って体感する作品が多数みられ、デジタルえほんが空間に広がりました。結果として、審査員の間で「デジタルえほんとはなにか?」という議論が再燃しました。それは我々が既存メディアの表現手法にひきづられていたからかもしれません。デジタルえほんとはなにか?という議論が起きたことこそが「デジタルえほん」いう新たな表現領域が成熟してきた証なのではないかと思います。
また、こどもたちが制作した作品が急増し、その質も格段に向上しました。プログラミング教育必修化の影響かもしれません。
さらには、これまでとは一味違う技術の使われ方をした今までに見たことのないような作品の応募も数多く見られました。タブレット・スマホが登場した初期の頃に「不思議の国のアリス」のアプリが注目を集めました。インタラクティブな要素をいれやすいストーリーですのでアリスのアプリを制作したのは納得です。そして、第6回目にまた新たなアリスアプリが受賞しました。空間に飛び出したウサギをタブレットを使って探しながら物語をすすめていく作品です。技術がまた一歩次のステージに進んだことを感じました。

第7回目は、デジタルえほんが、ミュージアム等の室内からすら飛び出し街などの広い公共空間に広がりました。またSTEAMコンテンツが増え、「見る・読む」ものから、「感じる・体験する」ものとなりました。この年は、過去最多国数である24カ国からの参加がありました。また、前年度に準グランプリを受賞したイスラエルの学生さんがクラウドファンディングで資金を集め、書籍化までした作品を送ってくれました。デジタルえほんを通じて世界と親密につながる経験となりました。

第8回目は、コロナの影響を受け、増え続けていた参加国数は減少しました。その一方でエントリー数は過去最多の400作品超えとなりました。巣篭もり生活だからこそ創造・表現をする時間が増え作品応募が増えたと捉えることもできるかもしれません。コンテンツをみてみても、コロナの影響を強く感じました。まず、コロナ禍だからこそ誕生したコンテンツが多数みられました。自宅にいながら花火が鑑賞できる、自宅にいながら修学旅行の体験ができる。また、前年に目立っていたミュージアムや街など公共の場で体験できるコンテンツは圧倒的に少なく、「自宅で遊べる・学べる・体験できる」ものが大多数となりました。それは海外からのエントリーも同様です。
また、学校に行けないこともあり、自宅でサブスクリプションで体験したり学習してりするデジタルえほんサブスクが増えました。表彰式もオンラインで発表のみ行いました。

第9回目は、前々回まで多くみられた公共の空間で展開される大型デジタルコンテンツが復活してきました。また、音楽、アニメなど「つくる」ことに特化したコンテンツが多く受賞しました。とくに、誰かと一緒に制作をして、共有する。創造・表現、共同・共有のツールが多くみられました。前年は、コロナ禍ということもありおうちで個人で楽しむ学習アプリが圧倒的に多かったのに比べ、デジタルえほんが、人とつながるツールとして活躍していることを嬉しく感じました。さらには、ダイバーシティ&インクルージョンの視点をもったコンテンツが目立ち始めました。身体的な障害などを抱えた方が楽しむことができるデジタルえほんの提案が複数みられました。

さて、第10回目となる今年はどうだったでしょうか?
表彰式は、ちょもろーにて!
https://www.digitalehonaward.net